パシッと志央に頭をはたかれて、七海が情けなく喚く。
「もう、凶暴なんだからぁ、志央さん~」
でかい図体で甘えた言葉を口にする七海。
「ちょっとそこ、いい加減にしてください」
傍で聞いている勝浩の方が赤面してしまう。
「あ、悪い悪い、チェリーちゃんには刺激強かったね~」
途端、志央のいじめっ子気質が顔を出す。
「志央さん、会長をいじめないでください」
一応たしなめるように七海は志央を見るが、まるっきり二人を見ていると、大きな愛犬を従えた女王様、という図だ。
勝浩は呆れた顔で、「お話にならない」と首を振る。
「誰が誰をいじめてるって?」
やっぱり来たか、と勝浩は心の中で呟いた。
今学校に来たばかりらしく、コートのままの幸也が薄いかばんを抱えて入ってきた。
暖かそうな黒いマフラーを取り、上質のカシミアのコートのボタンをはずしながら、幸也は勝浩の弁当を覗き込む。
「今日は玉子焼きと切干大根の煮つけと、ブロッコリーのサラダか。栄養バランスが取れたおかずだ、うん」
ムッとして勝浩は幸也を睨みつける。
「いちいち人の弁当覗き込まないでください」
それから、ブリックパックの牛乳を一口飲むと、居住まいを正す。
「っていうか、城島さんも長谷川さんも受験生でしょ? まがりなりにも。こんなとこで遊んでていいんですか? 毎日毎日」