事務所内での人事まではこちらの口を挟むことではないが、当人がやりにくいのであればどうなんだろう、と良太は思うのだが。
「明日までに返事をもらっておけ」
「わかりました」
相手がどんな人物かなどおかまいなく良太に命じてくださるのが工藤だ。
山根監督と脚本家の久保田は仲のいいコンビで、今回の映画化にはえらく力が入っているが、明日にも制作陣との打ち合わせを予定している。
「さ、仕事の話が終わったら、良太ちゃんも、飲もう飲もう!」
そそくさとどこへ行ったかと思ったら、シャンパンのボトルとグラスをいくつか持ってくると、ひとみが景気よく良太に一つを渡してボトルを傾けた。
「ほら、高広も、たまには笑えとは言わなくても苦そうな顔やめなさいよね!」
工藤にも渡すしてシャンパンを注ぐと、ついでに傍らのテーブルに置いてあった自分のグラスにもシャンパンを注ぎ、ひとみは「かんぱーい!」と工藤と良太のグラスに自分のグラスを合わせる。
するとあちこちから乾杯の声がして、賑やかな花見の夜は更けていく。
十時を回ったところで、参加者はよくわかっているらしく、そろそろと帰り支度を始めた。
最初に、奈々を送ります、と谷川がタクシーへと向かい、その後藤堂と西口が暇を告げた。
「藤堂さん、西口さん、ありがとうございました。お気をつけて」
良太や秋山が庭からの入り口で、客人一人一人に挨拶を交わした。
「楽しかったし、きれいでしたね~」
西口はニコニコと答えた。
「渡米するまで忙しいね、良太ちゃんも」
「藤堂さんはいつ向こうに?」
「第一回のミーティングの前日を予定してるんだが、ほら、何かって言うと河崎があれやれこれやれって言ってくるから、まあ、臨機応変に?」
海外も行きなれているらしい藤堂はいつもと同じ飄々としている。
森村が呼んでおいたタクシーが既にエントランス前に列をなしていた。
「おや、我々近くて申し訳ないね」
藤堂はそんなことを言いながら西口と一緒にタクシーに乗り込んだ。
「一足先に行ってるね。向こうに着いたら連絡してね」
直子はひらひらと良太に手を振りながら佐々木と一緒に帰って行った。
猫の手軍団の大柄な白石や加藤は窮屈そうにタクシーに乗り込んだ。
肇とかおりもアスカや直子、それに天野や紗英らと楽しんでいたようだが、「アメリカからのパワスポ、楽しみにしてるからね!」と良太にはっぱをかけて帰った。
千雪と研二、三田村、辻の京都組は、しばらく先ほどのヤバい話で語り合っていたようだが、京助にせかされて匠と一緒に帰って行った。
「千雪さん、また一度連絡します」
良太はタクシーに乗り込む千雪にそう声をかけた。
香坂と加賀は仲よさそうに帰り、理香と速水がその後に続く。
白河と紗英はそれぞれタクシーに乗り込み、小笠原と美亜や真中、井上と万里子は明日の仕事が早いと慌てて帰って行ったが、宇都宮と須永を連れたひとみ、白河と下柳、それに天野が最後まで飲んでいた。
「ひとみ、いい加減に切り上げろ」
業を煮やした工藤が文句を言った。
「何それ? それがお客に対する態度?!」
工藤にくってかかるひとみを「ひとみさん、ほら、行きますよ」と須永にせかされて、ようやくひとみも歩き出す。
「どんだけ飲んだんだ?」
工藤に聞かれて下柳は「シャンパンにワインに焼酎も空けてたからな」と苦笑する。
「ひとみちゃん、いつもよりピッチ早かったんじゃないか?」
こちらはどれだけ飲んでも何も変わらない宇都宮が須永とは逆からひとみを支えた。
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