ほんの少し届かない15

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 ここ数年何かあるたびに利用している会社だが、時折ドタキャンする学生バイトがいるらしく、良太はそれに備えて人数を多めに依頼している。
 にもかかわらずこれだ。
 一応、あと一人時間までに確保するということで電話を置いたが、もしダメな場合は自分も手伝うしかないだろうと良太は覚悟を決めた。
「っと、それから賞品はっと……」
「ねえ、良太、工藤さんは?」
 悠長にソファで脚を組んでアスカが聞いた。
「今日は夕方にちょっと顔を出すって言ってました。…っと、ハワイ招待券が…」
 忘年会で例年行われているビンゴゲームの賞品を確認するのに余念がない良太はおざなりな返事をした。
「ここずっと工藤さん、会社に寄りつかないんじゃないの。良太、ちゃんと手綱引き締めとかないと、どこで骨休めしてるかわかんないわよぉ」
 相手にしないと思っていながら、ついつい耳障りな発言に良太はイラついてしまう。
「あ~あ、木村ほのかはイブに彼氏とヨーロッパだって。ユキは北海道あたりかしら」
 電撃結婚でマスコミを騒がせた人気女優が、手持ち無沙汰なアスカがつけたテレビ画面の中で幸せそうにイブの予定を語っている。
「聞いた? 俊一のやつまで、今年のイブは万里ちゃんがオフだからって、二人でホームパーティだって。あっちもこっちもラブラブでやんなっちゃう~」
 耳障りなのはそれだけでなく、ちょっと街に出るとあちこちから流れてくるクリスマスソングだ。
 アスカでなくてもやんなっちゃう~、だ。
「あのさ」
 良太が忙しく車で飛び回っていた一昨日の午後だった。
「ちょっと話あるんだけど、今週とか時間取れないか?」
 携帯に電話をかけてきたのは久々、高校で良太の女房役のキャッチャーだった肇の声だ。
「や…今週はちょっと。土日もないって感じ?」
「そうか……来週は年末控えて、俺が難しいしな~」
「どしたんだよ、何かあったのか?」
「いや、……まあ…ちょっと」
 リトルリーグからのつきあいである肇のことだし、何やら電話では言いにくいことなのかもしれないと思った良太は、昨日、肇の昼に合わせて仕事の合間、肇の会社の近くに車を回した。
 時間がなくて近くのバーガーショップに飛び込んだ二人は、通りに面したスツールに並んで、忙しなく行きかうサラリーマンやOLを見るともなく視線を向けながら、ハンバーガーを齧った。
「肇、お前、何かやつれてないか?」
 ズズッとコーヒーをすすり、良太は隣の肇に顔を向けた。
「まな、今月は毎日終電まで残業でさ」
 忙しいのは青山プロダクションだけではないということだ。
「で? どうしたんだよ」
 肇はしかし良太と目を合わせようとせず、言いにくそうにハンバーガーをほおばる。
「何かやらかしたのか? 俺にできることがあったら言えよ?」
 心配そうに言う良太に、肇は声も出さずうなずきながら、たちまちのうちにハンバーガーを食べ終えて、喉につかえそうになり、慌ててコーヒーで飲み下した。
「バッカ、いくらなんでも、んな慌てなくてもいいだろ?」
「……おう……」
 コーヒーまで飲み干して、肇はふううと大きく息をついた。
「お前にあやまらなけりゃならないことがある」
「はあ?」
 良太はもったいぶって切り出した肇を怪訝そうに見やった。

 


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