大きな腕に抱き込まれ、わずかに目を開けた途端飛び込んできた工藤の色めいた視線の熱さに貫かれるともう、脳髄まで蕩けていく。
思わず目線を落としたつもりが、工藤の胸に顔をうずめると、フレグランスに混じった工藤の汗の匂いがシャツを通して鼻腔をくすぐり、良太はつい甘い息をついた。
いくら部屋が冷えているとはいえ、上着を脱ぎもせずに良太に取り掛かった己の余裕のなさに、工藤も自嘲する。
指一本も触らせないぞというここのところの良太の頑固さにはさすがに参っていた。
加えて度を越えたルクレティアのからかいだ。
確かに以前、まだ局にいた頃、仕事でミラノに滞在した二週間ほどの間だったが、ルクレティアに初対面でモーションをかけられ、後腐れないラブアフェアとお互い割り切って付き合ったことはある。
その後、何度か顔を合わせることがあったが、彼女には別の男がいたようだし、仕事モードで終始したはずだ。
それが最近男と別れたのだと、スタッフがにやにや笑いながら工藤に耳打ちした。
「やっぱりあんたがいいらしいってさ」
ったく、うざったい!
思い出すのも腹立たしく、上着を脱いで隣のベッドに放ると、今度は良太の上着やらズボンやらをするりと脱がせて、とっくにスタンバっていた良太をいとも簡単に追い上げる。
「……や……っ…」
頬を上気させ潤んだ目で良太は精一杯工藤を睨みつける。
「往生際悪すぎだ、お前」
「ばか…や…」
良太の減らず口など耳も貸さず、工藤はくたっとした良太の身体をくるりと裏返すと、腰を掴んで引き寄せた。
「わ…ちょ…やだっ…工藤…!」
言葉とは裏腹に身体はかっと炙られて熱くしびれたように動けない。
浅ましく正直に工藤を飲み込んで、与えられる甘い愉悦に良太はひたすら意味をなさない声を上げる。
何もかもが工藤で一杯になり、結局馬鹿みたいに悦んでいる。
そんな自分が情けなくてたまらないのに、この時だけは工藤を独り占めしていることが良太は嬉しいのだ。
工藤の唇づけがやたら甘い。
しょーがないよな……好きなんだから……
心の中で呟いて、良太は意識を手放した。
ブーッブーッという不快音がさっきから聞こえていた。
聞きなれた音なのだが、その場合どう動けばよかったんだろうなどと頭の中でぐずぐずと考えながら、腕を上げようとして身体がメチャ重いと思った時には、じゅうたんの上に転がり落ちていた。
はっと我に返って、目の前の状況がすぐには飲み込めず、良太はそれでもその音の出所を探り当てた。
「あ、はい、広瀬です!」
「良太? 今どこ? なんかさ、ルクレティアが高広どこいったってうるさいのなんの」
携帯の向こうから聞こえてきた声のテンションの高さに、良太はようやく事態を把握する。
「あ、アスカさん……今、打ち合わせで……」
「打ち合わせぇ?」
「えっと、綾小路さんに聞いていただければ。もうそろそろ会場に戻るんで、お願いしますっ!」
ボロを出さないうちにとそれだけ言うと、慌てて携帯を切る。
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