豪はひたすら写真を撮ることに専念していたが、知り合いのプロである田坂に頼んで、ビデオを撮ってもらっていた。
「あとで編集したやつ、音楽部のみんなに渡せば喜ぶよな」
元気とともにボランティアな豪はもともと気がいい男だ。
「それにしても一年生や寛斗は別としても、ほぼみんなプロじゃね?」
元気を手伝っていた東が頭を振りながらぼそりと言う。
「そういえば元気、またみっちゃんに呼ばれてるって?」
余計なことを言って東は元気にジロリと睨まれた。
元気らが片づけをしている間に音楽部員は保護者と一緒に三々五々帰っていった。
「なんかみんな、満足そうな顔してたよな」
井原がしみじみと言った。
「やってよかったね」
最後まで残っていた志田と瀬戸川が顔を見合わせて笑った。
瀬戸川の両親も寛斗の両親と互いに礼を言い合いつつ、片付けがあるという瀬戸川を残して帰っていった。
「なんかまるでお見合いってよりもう末永くって互いのご家族紹介って感じだよな」
井原がそれを見て響にこそっと言った。
響は笑い、まあ、どうなるかはわからないがとは思いながら瀬戸川と寛斗なら何となくうまくいくのではないかと漠然と感じた。
東の軽トラに椅子を積み込み、井原の車には元気の店から持ってきたお茶セット、アンプ、ギターを積み込んだところで、寛斗が「みんな、取り合えずメシ!」と呼びに来た。
「ほんとに皆さん、お疲れ様でした。お寿司が来ましたよ」
寛斗の母果歩がトレーに取り皿や箸を、朱莉がお茶一式を掲げてやって来た後から、寛斗と父親の健一が大きな寿司桶をすっかり元に戻されたリビングのテーブル置いてみんなを呼んだ。
「うわ、場所を提供していただいた上にお寿司まで! ほんっとにありがとうございます!」
早速遠慮なくお礼を口にしたのは井原だ。
「こちらこそ、こんな素晴らしい演奏会開催していただいただけで、もう感無量です」
健一はまた涙目になりそうに言った。
「ほんとに今日来てよかった! みなさん、どうぞどうぞ」
朱莉も嬉し気にみんなを促した。
井原も元気も豪も東も響も寛斗もみんなが健啖ぶりを発揮して、器の中の寿司はあっという間になくなっていく。
紀子も急に呼ばれた田坂も「役得だ」などと言いながらパクパク食べる。
「一年生も頑張ったよねえ」
「ですよね! 正直、いい意味で想定外」
瀬戸川も志田も笑顔で今日の演奏会の論評を始めた。
「青山さんなんか、みんなに付き合って大車輪の活躍」
「それにしてもすごい演目でしたね。私の中では元気さんの『夏』がもう大大大ヒット」
拳を握った志田が熱く語る。
当の元気は「急に曲を変えやがって」と井原に文句を言えば、「お前が俺の知らないところで響さんと示し合わせたりするからだろうが」とコソコソと小競り合いをしている。
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