花のふる日は3

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 年末には北海道にある京助の実家の別荘へ強引に連れて行かれたが、そこで会った、京助の実家で一緒に育ったという公一青年の話によれば、いつもは女の子をうじゃうじゃ連れてくるらしいし、たまたま居合わせた京助の兄の紫紀もまた、最初千雪を女だと思い込み、しかも一人だけだということに驚いていた。
 実際出会った頃から、京助の周りには学生から教授陣から女が群れているのを目の当たりにしているのだ。
 ちょっとばかり熱に浮かされていたのだろう、お互いに。
 俺は一人が寂しうて京助に依存し、京助は俺の見た目に騙されて、互いに好きやと思い込んだ、と。
「俺は別に騙したわけやないけどな」
 熱が冷めてみれば、何やってんのやろうと、思い知ったわけで。
 テレビの画面は天気予報に変わり、また桜の話題になっている。
 花……か。
 桜の花が千雪の心を切なくさせるようになったのは、いつ頃からだろう。
 あれは大学一年の春休み、ちょうど今頃だ。
 夏にバイクの免許を取っていた千雪は、金沢へ一人で向かった。
 金沢と東京に別れて新生活をスタートさせてから、電話をしてもそっけない、音沙汰のない薄情な親友を驚かそうと、研二には何も言わずに辿りついた研二のアパート。
 だが、そこで千雪は研二の部屋から出てきた美しい女性を見た。
 そのあと部屋から出てきたのは、紛れもなく研二。
 二人は研二の運転する車で去った。
 結局千雪は研二に声をかけることもなく、東京に舞い戻った。
 そっか、彼女できたんなら、ダチのことなんかかまってられんわな。
 無理やり、自分にそう言い聞かせて。
 東京に戻った千雪を満開の桜が出迎えてくれたが、その花の美しさは胸の痛みと共に未だに心の奥底にある。
 高校の卒業式に撮った写真と、互いに交換した学生服のボタン。
 それは千雪の机の引き出しの奥にまだ仕舞い込まれている。
 大学卒業と同時に、千雪には何も知らせないまま研二が結婚して京都に戻ったと聞いた時もさほど驚かなかった。
 江美子に言われる前から、互いに思いはわかっていた気がする。
 だが、研二はその思いを、研二は金沢へ、千雪は東京へと旅立つあの日に全て終わらせたのだろう。
 そうとわかった今は、あの卒業式の日道に散った花の記憶までもが心を苦しくさせる。
 いや、彼女に会うて目が覚めたのかもしれん。
 いくら見てくれがどうあれ、小林千雪は男やからどうにもならんて。
 去年の秋に千雪に会いに来て、研二のことを告げた江美子もまた、家のために取引先の三男坊を婿養子に迎えて結婚した。
 母が去り父が去り、江美子も、研二も自分から去っていった。
 けれど置き去りにされた千雪の心は、動けないでいる。
 思いは誰もが一様ではない。
 研二が終わりにしたとしても、千雪の中では終わってはいない。
  
 京助のことを好きなのは嘘ではない。
 けど……
 京助は研二やない。
  
 俺は研二がいない空白を、ちょうどうまい具合に近づいてきた京助に求めて、研二の身代わりにしたんや。
  
 それももう、これでしまいや。

 


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