「そら、名探偵のイメージは大事やし、ほんまいうと、高校の頃女の子に追っかけられすぎて嫌気がさしてたよって、これなら誰も寄ってこないだろう思て。わかりますやろ? 西岡警部」
不細工の代表のような面構えの西岡警部に千雪がわざとらしくそう言うと、警部はムッとした顔で千雪を睨みつける。
「早いとこ、捜査しなおした方がええん違いますか?」
ほんとに頭から湯気でもでそうなくらいいきりたっている西岡警部が出ていくと、渋谷はすまなかったと頭を下げる。
「君を疑うつもりはなかったんだが」
千雪はちょっと笑う。
「身内のことはまず疑わへんのにね。俺なんかに構って無駄に時間を過ごして? 優秀な警察のやることやから、最初の事件と次の事件の男の人相風体、ちゃんと調べてはりますよね? 同じ『名探偵』やったんかどうか」
渋谷は千雪を見つめたまま、しばし口を噤む。
「何でその、『名探偵』が俺の仕業や思わはったんです? そのくらい聞かせてもろてもええですやろ?」
責任を感じているらしい渋谷はおもむろにポツリポツリと話し始めた。
「最初のガイシャは、ヤクの売人で、家出した女の子やなんかをシャブ漬けにして身体売らせるとか、まあ、女を食い物にするありとあらゆることをやってきたロクでもないやつで、次は開業医だが、裏ではクスリの売買に加担して、最初のガイシャとさして変わらない悪行をやってきた男だということは調べがついていて、……その、君の小説にはそういう連中を許せないみたいなことがよく出てきてるし……」
「二つの事件の被害者に接点はあったんですか?」
「………いや、それがいろいろ調べているんだが、接点は今のところ……小林くん、君は身内を調べろと、そう言いたいのか?」
千雪を見つめながら、渋谷は思い出したように聞いた。
「さあ、俺にはそんな権限はあれへんし」
「西岡さん、あれでもいつもは人情に厚くて優しい先輩なんだよ。二件目の事件で亡くなったのは、世田谷西署の刑事で西岡さんが可愛がっていた部下だったんだ。それで……」
なるほどね、と千雪はあまりに予想通りな展開に少し呆れる。
「確かに、そら身内がそないな目に合うたら、頭に血がのぼってもしょうがない思いますけど。優しいのんは身内にだけ違います? ヤクザが身内にいるやとか、ジャージにメガネの人相風体やからとか、上っつらで人を見下すみたいな警察、どう信用したらええんです?」
西岡の弁明をする渋谷に対して、千雪はストレートに思ったままを口にする。
「手厳しいな、それは」
渋谷は苦笑いした。
「警察にストーカーの相談してたのに、ストーカー被害に合ったいう事件ありましたよね? もし、俺が実は襲われそうになりました、ストーカー被害に合うてるんです、て警察に駆け込んだら、どう対処してくれます? 被害届け書かせて、また何かあったら、てだけですやろ? どころか、男がストーカー被害やなんて、て内心笑ろてるんが関の山や」
千雪は言った。
「え……いや、そんなことは……」
ないとは言えないらしく渋谷は首を傾げた。
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