花のふる日は38

back  next  top  Novels


「それで俺に直接言うてきたわけか。物好きやな」
 その時、工藤の携帯が鳴った。
「おい、携帯出てくれ。当分停められん」
 車は中央道を滑るように走っている。
「ハンズフリーとかしたらええのに」
「まどろっこしいのは嫌いなんだ」
 千雪は仕方なく工藤の上着のポケットで鳴っている携帯を取り出した。
「はい、工藤の携帯です」
 すると一瞬、相手が黙り込んだ。
「ひょっとして、小林くんか?」
「え、渋谷さん? どないしはりました?」
 意外な相手だった。
「君の携帯、電源切ってるだろ、だから、工藤さんに知らせてもらおうと思って」
「ああ、すみません」
「事件のことだが、君の推察通り、二つの事件に関連はない。一件目については娘がガイシャのせいで亡くなったという父親が浮上してね。二件目は………どうやら身内を追及せざるを得ないようだ。一応、それだけ、報告しておくよ。今回は、……本当にすまなかった」
 律儀な渋谷が電話口で頭を下げていそうなようすが千雪の頭に浮かんだ。
「もういいです。とにかく事件が早いとこ解決することを願ってますわ。まあ、冤罪は作らん方がええ思いますけど? ほな、失礼します」
 携帯を切って、工藤のポケットに戻すと、工藤がフンと鼻で笑う。
「渋谷もお前に見限られんように必死なんだろ。これでよくわかったんじゃないか? お前の機嫌を損ねたらえらいことになるってな」
「何やね、それは。てより、工藤さん、渋谷さんのこと知ったはる?」
「あいつ、ガキの頃、たまたま俺のうちの近所に住んでたんだ。小学校の頃か? あいつのオヤジが駐在所にいた頃だ」
「そうなんや……まあ、警察官の中ではまともな方や思うけど」
 工藤は千雪の言葉にまた苦笑する。
 こいつ……、見かけによらずというのはこいつのことだな。
 面白いじゃないか。
 工藤は益々、小林千雪という人間をこの先も追いかけてみたいと思い始めていた。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
いつもありがとうございます