もともと平造は自分の経歴や背中の彫り物のこともあり、周りにも不愛想だったのだが、たまたま杉田に来てもらってからというもの、杉田の遠慮なく突っ込んでいくような明るい性格がよかったのか、平造も徐々に口を開くようになった、らしい。
というのもみんな杉田のおしゃべりから良太が聞かされたものだ。
工藤の小さい頃の話などを聞くと、あの鬼の工藤にも子供らしい時があったんだと思って、ちょっとほっとしたりもする。
工藤はポケットから札入れを出し、テーブルに置くと階段を上がって行った。
「はい、わかりました」
良太は二階へ上がって行く工藤の後ろ姿をぼんやり見つめた。
「なんか、うらぶれてるって感じ………そっちこそしばらく休んだ方がいいって」
暖炉のそばのテーブルにお茶や皿を用意しているうちに、やがて寿司屋がきたらしく、門のチャイムが鳴った。
リモコンで門扉の横のドアを開けると、玄関でまたチャイムが鳴った。
寿司は三人前はありそうだ。
「こんなに誰が食うんだよ」
ちょっとしたあまのじゃくから文句の一つも口にしてみるが、寿司を前にしたら途端に腹が減ってきた。
「ビール、ビールっと。工藤、熱燗のがいいかな」
良太は冷蔵庫から自分の分のビールを出してきたが、せっかく工藤が帰ってきたというのに、先に一人で食べる気にはならなかった。
「工藤と食事とか、すんげ、久しぶりって気がする」
テーブルに頬杖をついた良太はそんなことを考えて少しほっこりした。
「おい、良太」
揺さぶられて良太ははっと顔を上げた。
どうやら知らないうちに居眠りしてしまったらしい。
「まだ食ってなかったのか」
ガウンを羽織った工藤は缶ビールを二つのグラスに開けると、一つを良太の前に置いた。
「疲れてたんですよ、高速飛ばしてきたから」
つい、憎まれ口を聞いてしまう。
「いただきます!」
食べ始めるともう止まらないくらい、良太はもくもくと健啖ぶりを発揮した。
「番宣プロモーションの時なんか急に竹野紗英がなんで工藤さんがいないんだっていちゃもんつけてくるし、もう先が思いやられますよ。奈々ちゃんがドラマのオーディション受かったのはよかったけど」
アルコールが少し入ると、良太は工藤の留守中のことを端から話した。
SNSでその騒ぎが拡散されて、工藤と竹野がどうとか根も葉もない噂が一時あがっていたことはうっかり言ったりしなかったが。
「そういえば、宇都宮さんて、大物俳優のくせにざっくばらんで面白い人ですよね」
「宇都宮?」
それまでちょっと鼻で笑うくらいの反応だった工藤がグラスをテーブルに置いた。
「番宣の後、何か相談があるとかって言われて、ご飯奢ってくれたんですよ」
「それで?」
「それが、結局、何か俺の仕事の話とか例のドラマの脚本家が逃げちゃった話とかで終わっちゃったんですけどね」
「ほう?」
「帰り送っていく時、宇都宮さん勝手にナビに住所とか入れるから焦りましたよ。あんな人気俳優の家とか、俺、責任重大じゃないですか。ただでさえ、週刊誌とかによく追われてる人だし」
「御殿山まで行ったのか」
「あれ、知ってるんですか? そういや工藤さんとこも近くですよね」
工藤の家は高輪にあるのだが、あちこち飛び回っている工藤はあまりゆっくり帰ったことはない。
良太から見ると、会社の上にある部屋の方が居心地がよさそうな気がする。
と、工藤の携帯が鳴った。
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