花を追い4

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 高速に乗った頃、ハンズフリーにしている携帯が鳴った。
「コンペ、どうなった?」
 沢村である。
「来週にならないとわからない」
 沢村の魂胆はわかっている。
 プラグインに決まれば、デザイナーの佐々木が制作に加わる可能性大だからだ。
「大体、シーズン中だろ? そんなこと気にしてていいのか?」
「うるさいな、夕べは四の三だった!」
 確かに。それは良太も知っている。
 ゲームの最後、見ていたからホームランもしっかり。
 チームも勝った。
 シーズン中の撮影はノーと最初きっぱり断った沢村だが、ランニング中やジムでのトレーニングを普通にしてもらえばいいというスポンサー側の熱心さに、だったらプラグインにしろ、という条件をつけたという。
 スポンサー側はもともと沢村とアドバイザリー契約を結びたかったようで、再三コンタクトを取ろうと試みたものの、沢村にノーを突き付けられていたらしい。
 このCMを機に契約もというのがスポンサー側の一つの狙いでもある。
 ただし、ここで沢村の要求をのんで、じゃあプラグインにとは簡単には行かないのが現実である。
「とにかく四の三は終わったことだろ? 今日のゲームに集中しろよ」
「ちぇ、古参の監督みたいにわかったふうなこといいやがって。決まったらすぐ連絡しろよな」
 偉そうな台詞を吐いて、電話は切れた。
「ったく、仮にプラグインに決まったって佐々木さんがやるとは限らないじゃん」
 で、また佐々木さんがやらないんなら降りるとかって言うんだろ、あのやろ。
 思い切り上から目線で文句つけやがって!
 まあ、それだけの選手だからな。
 スター選手だからと沢村が思い上がった態度だというのはマスコミが勝手に広めた話で、実際はイエスノーをはっきり言う性格なだけなのだ。
 今回のようなダダコネをするとそのことばかりが取りざたされてあいつは傲慢だとか言われてしまうだろうが、沢村を知っている者ならそんなワガママを通そうとするのは佐々木絡みだからなのだとわかる。
 だから許されるというわけではないが、今までの恋人であれば沢村は隠そうともしなかったし、もっと余裕で構えていたに違いないのだが、男だからとマスコミに知られるのを気にして佐々木が頑なにシーズン中はなるべく会わないようにしているらしい。
 会いたいのに会えないと沢村が焦るのも良太としてはわからないではないのだが。
 佐々木が東京の一等地にある土地の雑木林の半分を税金対策のために売ることにした時も、沢村が密かにその情報を仕入れて扱っている不動産屋で即購入してしまったことが佐々木にバレて怒らせ、果ては良太に泣きついてきた。
 結局当人同士で何とか和解したようだが、その土地に自宅としてちょっとした和風家屋を建てようと画策していることはまだ佐々木に話していないらしい。
「とにかく、この忙しい時にあれやこれやを俺に持ち込むなよ!」
 会いたくても会えないとか、そんなのいくらでもあるんだし。
 モヤモヤは良太の中にもある。
 俺だって工藤に会いたいんだよっ!

 


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