師走ということも重なって、仕事だけでなくイベントや忘年会などもバタバタと入り、佐々木の毎日はジャスト・エージェンシー時代以上に忙殺されていた。
青山プロダクションからも忘年会の誘いがあったが、その頃佐々木はプラグインの河崎と共にニューヨークにいた。
帰国しても佐々木は休むことなく仕事をこなし、気づいたらオフィスで朝を迎えていたなんてことも多々あり、そんな十二月もようやく中盤に差し掛かる。
随分時間の歩みがのろく感じられた。
誰かに会いたいがために、こんながむしゃらになっている自分が、佐々木は不思議でもあった。
だが、何とか今度の金曜の夜は空けておきたい。
そんな時に限って、東洋商事のプランの修正に佐々木は少し煮詰まってしまった。
金曜はプラグインの河崎らと東洋商事に出向くことになっている。
結局また木曜から徹夜になった。
「佐々木ちゃん、大丈夫? 夕べも徹夜だったんでしょ? ここんとこ、働きすぎだよ?」
よほど疲れた顔をしていたのか、金曜の朝出社した直子が心配そうに言いながら、暖かいミルクティをいれてくれた。
「おおきに……何とか、さっき仕上げたとこ……午後二時に東洋商事やから、昼までちょっと奥で寝ててええ?」
「いいよぉ。ジャケット、持ってきてる?」
「うん」
「じゃあ、持っていくものその辺に置いておいて。ナオ、用意しといたげる」
「助かる」
二時間ほど眠れるなと奥の部屋のソファに横になり、毛布を被った途端佐々木は眠りに落ちた。
オフィスの電話が鳴ったのは、正午より少し前のことだ。
「はい、オフィスササキでございます」
直子が電話を取ると、相手に一瞬戸惑ったような間があった。
「佐々木さん、いらっしゃいますか?」
「ただ今佐々木は席を外しておりますが、どちら様でしょうか?」
「……えっと……、トモといいます。さっき携帯にかけたんですが、留守電だったので、すみませんが、戻られたら伝えていただきたいんですが、今晩、九時になりますと」
「今晩、九時になります、ですね、かしこまりました、お伝えいたします」
「ああ、これからしばらくこちらも携帯オフにしますので、よろしくお願いします」
電話が切れてから、直子はメモしながら、「トモさんよりっと。なるほどぉ……トモさん、か」と呟いた。
「あ、ああ、打ち合わせか」
正午ジャストに直子に起こされた佐々木は、トモからの伝言を聞いて内心ドキリとして、つい適当なことを口にしてごまかした。
「携帯留守電だったから、こっちにかけたって言ってたよ。あ、それと、しばらくあっちの携帯がオフになるって」
何かしら言いたげな口調で、直子はつけたした。
徹夜明けの無精ひげがまばらみたいなひどい顔でクライアントに会うわけにはいかないので、佐々木はバスルームに飛び込むとざっとシャワーを浴びて、顔をあたる。
歯ブラシからシェービングクリームから洗顔フォームやローションの類までのグルーミング用品なども、佐々木の常備品を知っている直子がすべて揃えてくれている。
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