恋ってウソだろ?!51

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 テレビの前のテーブルに弁当とお茶を用意して、直子は佐々木を呼んだ。
「え、何? 呼んだ?」
 佐々木が振り返ったのは、二度目に直子に呼ばれた時だった。
「お昼にしようって言ったの」
「あ、そか、もう、そんな時間か」
 そう言って佐々木は画面を見たが、画面の中の仕事は遅々として進んでいなかった。
「佐々木ちゃん、何かあった?」
 向かいに座った佐々木に、直子は小首を傾げながら聞いた。
「ん? 別に。仕事がはかどらんだけやし」
「そう?」
 直子はそれ以上聞かなかったが、直子なら佐々木のようすがおかしいととっくに気づいただろう。
 トモのことをいくらリセットしたつもりでも、考えないようにしようとすると頭の中が真っ白になって、仕事も急停止してしまう。
 さっきからそんなことの繰り返しだ。
 いつの間にか弁当の容器やマグカップを片付け、直子がコーヒーをいれてきてくれた。
「あ、ありがと」
「やっぱ、やまないかなぁ、雨、夜までに」
 直子がコーヒーを持ったまま立ち止まり、窓の外を眺めて呟いた。
「やみそうにないな。タクシーで行こ」
「うん。っと、これやっちゃったら佐々木ちゃんちに行って、ジャケットとか取ってくるね」
 佐々木の部屋にはもう何度も出向いて、直子はたまに掃除までしてくれている。
「悪い。仕事やないことまで」
「今更でしょ」
 やがて直子はパソコンの前で真面目な顔をしてもくもくとキーボードを打ち始めた。
 そんな直子を見て微笑み、コーヒーを少し飲んで少し気を取り直した佐々木は、自分の仕事に向き直った。
 
 
  
 
 
 雨は小降りにはなっていたが、やむような気配はなかった。
 佐々木と直子を乗せたタクシーが麻布にある河崎のマンションの前に着いたのは、午後七時を過ぎた頃だ。
 管理人室の横、警備員が立つエントランスを中へ進むと、各々の部屋につながるドアフォンがある。
 直子が河崎の部屋番号を押すと、藤堂の声で「ようこそ、どうぞどうぞ」と愛想よい返事が返ってきた。
「藤堂さんて、どんなに忙しうてもクリスマスは絶対確保するよなぁ」
 佐々木がボソッと言うと直子が笑う。
「何か、お母さんの影響だって聞いたよ。お母さん、クリスチャンなんだって。子供の頃からお母さんと一緒に施設とかプレゼント持って回ってたんだって」
「なるほど、それがサンタ藤堂のルーツいうわけか」
 エレベーターに乗り込んでから、直子がじっと佐々木を見つめている。
「ん? 何?」
「やっぱ、今日の佐々木ちゃん、可愛い! このジャケット、正解!」
「ええオッサン捕まえて、可愛いはないやろ」
 いつも、適当なセーターとジーンズくらいで動いている佐々木だが、仕事用のスーツなどを新調した時、直子にいろんなショップへ引っ張りまわされた。
「絶対佐々木ちゃん、似合うと思ってたんだ」
 プライベート用にあってもいいよ、と直子にせっつかれ、結局購入したのが今夜のセットアップである。

 


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