ほんの少し届かない23

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「まず二十三日だが、ええ~もし、MLB挑戦の平岩選手の球団が決定すれば冒頭のフィギュアショートプログラムの前に持ってくる、と。そのあと三冠王関西タイガース沢村選手を迎えてのインタビュー」
 ディレクターの殿村が念を押すように言った。
「しかしポスティングで西垣もMLB行きとはねぇ、プロ野球も何だか淋しくなるなぁ」
 良太がプロデューサーとして名を連ねるスポーツ情報番組『パワスポ』も年末年始には特番を予定している。
「でもほら、甲子園で活躍した若い力が入ってきますから」
 根っからのプロ野球好きである殿村がしみじみこぼすのに、良太が励ますように言った。
「あっちでもこっちでもMLBだか、夢だ何だとひょこひょこ行っても、どうせメジャーに上がれねぇで戻ってくるのが関の山だろ。ポスティングっつっても、やれていいとこ一年ってやつだな。松坂あたりならまあ、わからないでもないが、何か勘違いしてるやつが多いんじゃねえの? がんばって下さいなんつって流しても、来年の今頃は名前出すのも気の毒みてぇなもんでさ」
 相変わらずの皮肉屋、シナリオライターの大山が言いたいことを言う。
「でも夢を追うのはその人自身だし、周りが口を挟んでも意味がないと思います」
 つい、また良太は言い返す。
「おお、もと野球少年の良太ちゃんは自分ができなかった夢を彼らに託したいってやつねん」
 茶化して言う大山に、食って掛かりたいのは山々だったが、打ち合わせをそんなくだらないことで伸ばしたくはない。
「確かに、プロなんてのは夢を追うからプロってんだろうね」
 いつものように殿村の助け舟が入る。
「広瀬くん、年明けの特番、『トップアスリートに聞く』沢村選手と銀盤の妖精上原由衣の対談、問題ないよね?」
 制作部長が聞いた。
「あ、ええ、それはもう沢村選手本人にも再三確認済みです。上原さんサイドに伝えたところ、こちらもすごく喜んでましたから、よろしくお願いします」
 日本のフィギュアスケートを牽引するトップスケーター上原由衣が同じ大学のOBである沢村のファンだということで二人を対談させようという企画になった。
 結局、沢村との交渉はお友達である良太に一任され、番組のあと飲みに行く約束で沢村からOKを取りつけた。
 まあ、その程度で出演を快諾してくれる三冠王とお友達であるということ自体、幸運なのだろうけれど。
「そういや沢村、ポスティングだMLBだって、前は騒いでたのに、すんなり契約更改しちまって、お前の夢はどこへ行ったんだって、お友達に聞いとけよ、良太ちゃん」
 打ち合わせが終わって会議室から出たところでまた大山が絡んでくるのをジロリと睨みつけ、良太は「お先に失礼します」とテレビ局をそそくさと出る。
 今年も優勝を逃した関西タイガースが三冠王を取った沢村を早々手放すはずもない。
 が、それだけでなくいつぞやMLBにポスティングで行く、新しいプロジェクトにお前を連れて行く、と喚いていた沢村は良太が断ってからどうやら路線を変えた。
 そんなことで路線変更するな! と、良太は沢村に食って掛かったが、沢村と来た日には、柔軟な姿勢は大事だ、とか何とか言ってごまかすのだ。


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