恋ってウソだろ?!14

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「そう、ほら、美しいモデルさんに着物を着てもらうことはいくらでもできるけど、茶道のプロで美しいモデルさん、っての探すのはなかなか難しいんですよ。だから、このプロジェクトはあれもこれも佐々木さんにかかってるといっても過言ではない」
 藤堂の言葉には妙な説得力があった。
「いつもいつも藤堂さんの突拍子のない発言には悩まされてばっかですけど、今回は、俺も賛成です。それ、いきましょうよ!」
 浩輔までが同調する。
「おい、おい、待ってくれて……とにかく、これに関してはちょっと考えさせてください」
 冗談やないで。
 佐々木は仕事までが思ってもみなかった方向に行きそうで困惑する。
「盛り上がってるじゃないか」
 いつの間に傍にやってきた河崎がボソリと言った。
「仲間に入りたいのなら、素直にそう言えばいいだろ?」
 藤堂の揶揄にジロリと睨みをきかせる河崎と後ろの三浦に、佐々木は名刺を差し出した。
「今度、独り立ちすることになりましたので、よろしくお願いします」
「こちらこそ、ウチの浩輔が世話になるがよろしく。これから出なくちゃならないんで失礼する。おい義行、できる限りフォロウしてやれよ」
 受け取った名刺を名刺入れにしまうと、河崎は三浦を促してドアに向かった。
「相変わらずお忙しいみたいですね」
「仕事大好きで、あくせくしてないと生きた心地がしないんですよ。貧乏性ともいう」
 いや、何のことはない、河崎はぶれない男なのだ。
 以前は独善的だという印象しかなかったが、一緒に仕事をするようになって佐々木の中で河崎に対する見解が変わった。
 浩輔に仕事を任せたというのも、浩輔の技量を評価し、信頼しているからこそなのだろう。
 その河崎に対して、河崎の本質を理解し、浩輔は信頼をもって応えている。
 それはずっと変わらないに違いない。
 いや、浩輔が今の河崎を支えているのかもしれない。
 浩輔もいい表情をしている。
 浩輔の選択は正しかったのだ。
 でも、今の俺にも浩輔ちゃんがいてくれたら、オニニカナボーなんやけどなぁ。
「佐々木さん、何か?」
 浩輔がきょとんとした顔で、じっと自分を見つめる佐々木に聞いた。
「いや、別に」
「何か、今日の佐々木さん、変ですよ? 風邪でもひいたんじゃない? 熱とかない?」
 いかにも心配そうな顔で、浩輔は佐々木を見た。
「ああ、平気や。ちょっと、新しいオフィスのことで、あれこれあったんで」
 佐々木は適当な言い訳で取り繕う。
「大丈夫ですか? ナオちゃんだけでしょ? 何なら俺も手伝いましょうか?」
「いや、もうほとんどOKやから」
「それならいいですけど。じゃ、俺、大和屋さんにアポとって連絡入れますから」
「ああ、よろしく」
 まだ疑わし気な浩輔に、佐々木は笑みを見せた。
「良太ちゃん、これから会社帰る? 歩きだろ? 送ってくよ。これから行くとこあるし」
 藤堂が帰り支度をしている良太に声をかけた。
「わ、助かります」
「佐々木さんも帰るんでしょ? 乗って行きません?」
「え……はい」
 オフィスに戻るとまたあの男のことを考えそうで、佐々木は煮え切らない返事をする。
「佐々木さん、スケジュール決まるまではゆっくりした方がいいですよ。何かほんとに疲れてるみたいだし」
 佐々木を気遣った浩輔はそう言って佐々木を送り出した。

 


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