恋ってウソだろ?!15

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 五時か。
 日が落ちるの早よなったな。
 佐々木は藤堂が運転する車の後部座席から街路灯がともり始めた通りをぼんやりと見つめていた。
 近づいてくる夜が佐々木の心を重くする。
 何や、いややなぁ。
 このままばっくれてまおか。
「冬でも雷、ビシバシ落ちるからね、乃木坂付近には」
「こないだもよそのタレントさんのマネージャーびびらせちゃって、俺の方にとばっちりですよ、お前がちゃんと言っとけとかって」
 藤堂とナビシートの良太は、さっきから良太の上司である青山プロダクション社長の話で笑っている。
「しかし、工藤さんの場合、ちゃんと理由があってだろ? うちの河崎が気分で怒鳴り散らすのとはわけがちがう」
「いやあ、気分でなんていくらもありますよ」
「まあ、俺に対してはそうかもね」
「え、どうしてです?」
「そりゃ、俺と良太ちゃんが仲良しこよししてるのが面白くないからさ」
 もしかして、この二人って、そうなんやろか。
 けど、藤堂さんって、女の子にモテまくりやのに。
 佐々木は、二人のやり取りを聞いていて、ふとそんなことを考える。
 LGBTQとか何とか、マイノリティ差別をやめようという風潮が世の中に流れているものの、実際問題として市民権を得ているわけではない。
 だが、意識的なハードルは多少なりとも低くなっているかもしれない。
 少なくとも業界に近いところにいると、そんな風にも感じないではない。
 かといって、別にあの男とのことを正当化するつもりなど毛頭ないのだが。
 車は青山通りから外苑東通りに入り、やがて乃木坂へと向かう。
 数分ほどで青山プロダクションビルの前に、藤堂は車をつけた。
「藤堂さん、ありがとうございました」
「また、遊びにおいで。待ってるからね」
 藤堂は良太にひらひらと手を振った。
「明後日、浩輔と伺うので、よろしくお願いします」
 ナビシートから降りる良太に、佐々木は言った。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
 車はUターンして外苑東通りを戻っていく。
「良太ちゃんもいい子だと思わない?」
 急に同意を求められて、佐々木はちょっと戸惑う。
「そうですね。表裏がないというか」
「そうそう、ってより、思ったことがすぐ顔に出るし。あれで、かなり頑固で負けず嫌いなんですよ。あの、鬼の工藤に平気で食って掛かりますからね」
 プロデューサーとして業界でそんな異名を取った青山プロダクション社長工藤高広のことは、佐々木でも知っている。
 やり手のキレ者だが冷酷非情な男。
「でも、がんばりやだからねぇ」
 そう、みんながんばっている。
 仕事を少し離れると客観的に見えてくるものがある。
 たったひとりでポンっと世の中に放り出されてみると、まるきり迷子になった幼児のようで、これからどう動いていいかわからない。
 てか、俺、何をしたいんや………

 


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