「あ、ゴメン、起こしちまったか?」
朝、佐々木が目が覚めるとすっかり身支度を整えたトモが立っていた。
「いいよ、まだ寝てて」
身体を起こそうとした佐々木を制して、トモは微笑んだ。
「この部屋、年間契約してるから、いつまでいても構わないし。こんなこと言うとイヤミに取られるかもとか思ったから、言わなかったけど」
佐々木は目を閉じたまま笑った。
「今更やろ……」
「佐々木さん……夕べ言ったこと、聞いてた?」
「え………何? 悪い……俺、一昨日徹夜やったから……」
「……そっか。いいさ、ゆっくり休んで……本当は行きたくないんだけど……」
「仕事やろ……早よ行った方がええ……」
トモは佐々木にキスし、じゃあ、また連絡する、そう言って部屋を出た。
ドアが閉じられる音を聞きながら、佐々木は再び瞼を閉じた。
カウンターの上には小さなホワイトツリーが陣取っていた。
直子が目をつけていたショップで購入したものだ。
世の中はすっかりクリスマス一色だ。
恐ろしいことに二十五日の夜二十四時を過ぎた途端、煌くイリュミネーションは正月用のディスプレイに取って代わられる。
日本という国の変わり身の速さは特筆すべきものがある。
クリスマスというのは、キリスト教の国々や信者にとって特別な意味を持つ厳粛な日であるはずだが、日本でのクリスマスといえば、イベント、である。
あるサラリーマンたちにとってみれば、それは飲み会であり、恋人たちにとってみれば、イブは二人きりでいちゃいちゃする日なのだ。
それでも日本人は、何となく心が浮き立つような、夢心地になれるクリスマスが好きである。
きらきらした日。
サンタクロースがプレゼントをくれる日。
皆で楽しくパーティで騒ぐ日。
そんなことで、みんなが幸せな気分になれるならいいじゃないか、と。
日本のクリスマスは、ある意味日本人のたくましさの象徴といえるかもしれない。
『美味しいお酒やお料理やスイーツはもちろん沢山用意するし、軽く立ち寄ってくれたらいいよ。場所は河崎のマンション、二十四日の夜から二十五日まで時間無制限ね』
佐々木や直子もプラグインの藤堂からパーティの誘いを受けていた。
「佐々木ちゃん、プラグインのパーティ、行くよね?」
さっきから何やらそわそわしながら、直子が聞いた。
「え………いや、ひょっとして無理かも」
「まさか、クリスマスイブに打ち合わせとか?」
「いや、そんなんやないけど……」
トモは連絡すると言っていた。
おそらくまだスケジュールが決まっていないのだろう。
ただ、ホテルの部屋を出る時、トモが言った言葉が気になっていた。
「佐々木さん……夕べ言ったこと、聞いてた?」
何を言ったんやろ? 確か、「俺、実は…」とか言うてなかったか?
「ふーん、佐々木ちゃん行かないんなら、ナオもやめようかな」
「ナオちゃんは行ったらええやん?」
「うーん、でもさ………」
コンビニで買ってきた弁当を二人で食べたのだが、いつもゆっくりな直子が妙に早く食べ終えて歯磨きをしてきたようで、コーヒーを持ってリビングの大画面のテレビの前に移動している。
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