恋ってウソだろ?!53

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「先生はやめてほしいわ。高津って、東美大で大賞取った人やろ? 噂は聞いてる。おもろいな、あの、ペットボトル使こたやつ」
「うわ、すげ、し、知ってらっしゃるなんて、光栄っす!」
「始めまして、萩原悦子です。私も悠ちゃんと同じクラスだったんです」
 高津の隣に立つ美人がはきはきと自己紹介した。
「佐々木です。みんな、油かぁ。俺も昔はやってたんや」
 佐々木は若いエネルギーに気圧されながら言った。
「え、そうなんですか?」
「うん、てっきり油、受けるつもりやってんけど、美術のセンセに、お前のその突拍子もない発想はデザインやった方がええ言われて」
「そら、佐々木先生みたい才能ある人はなぁ、何やっても。俺なんかバイトしながら制作してて、マジきついっす」
 高津が大仰に溜息をつく。
「院に残らんかったん?」
「いや、金が続かないってか……悦子みたい、教員やるような頭ないし」
「教員とか、学校のことで手一杯で、描く時間つくるの大変なのよ。高津の方がマシだって」
 悦子はきっぱり言い返す。
「なるほどねぇ。けど、そうやって自分の理想追い求められるんやから、羨ましいわ。俺なんか、時々何やってんのんやろ、思うもん」
「天才クリエイターの佐々木先生にそんなこと言われたら、俺ら、どうしたらわかんないっすよ」
 佐々木の情けなさ極まれりの台詞に、高津が反論する。
「作品展とかは?」
「ああ、今度、悠も一緒に三人でやろうってことに。藤堂さんが、ここ手伝ったらギャラリー使用料負けてやるって言ってくれて」
「楽しみやな。そん時は知らせて」
「はいっ! よろしくおねがいします!」
 入れ替わりに悠がやってきて隣に腰を降ろし、佐々木に彼の絵に対する意見を求めた。
「面白いと思うよ。君の感性がぴりぴり感じられるというか。このまま続けていったらええよ。思うとおりに。君の嫌いな飯倉先生も誰にも真似できない君の感性をきっとやっかんでるんやない?」
 すると悠は一瞬きつく口を噤み、そしてまた口を開いた。
「飯倉はさ、確かに好きじゃないんだけど、あいつ、娘が心臓悪くて、その娘のためなら何でもやるって。そういうとこは逆に俺、偉いやつだと思って」
 悠は神妙な顔で語る。
「知ってたんや? 先生、そういう弱み、あんまり見せとうないって人やからな。でも娘さん、今、アメリカに行ってるよ、向こうで手術受けるらしい」
 途端に悠の表情が明るくなる。
「そっか、よかったじゃん。そしたら、ちょっとはあいつも行い、改めろよな」
 聞きようによっては恩師に対して随分横柄な言い方であるが。
「ハル、から揚げなくなるぞ」
 高津が呼んだ。
「取っとけよ!」
 悠は立ち上がって怒鳴り、慌ててテーブルに向かう。
 どうやらあの生意気なところもまた憎めないというのが悠なのだろう。
 にしても元気やなぁ。
 やっぱ若いからかな。
 いや、藤堂さんも河崎さんも、よく動くよな。
 バイタリティの差やな。

 


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