恋ってウソだろ?!61

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 それこそ、大勢の人間が楽しんでいる中で、佐々木を問い詰めるわけにもいかず、しかも直子という女の子がべったり佐々木にくっついている。
 
「佐々木ちゃんはナオだけのものなの!」
  
 直子がそう宣言するのを聞いて、沢村は胸をかきむしられるような思いにかられた。
 やはり、あの子と、そうなのか?
 だがそれでも、佐々木と直接言葉を交わしたかった。
 何とか佐々木に近づこうと画策しているうち良太は帰ってしまった。
 そう、ちょうどあの夜も同じような状況だった。
 十月の最後の日、沢村は自分が部屋を借りているホテルでたまたま良太が打ち合わせと聞き、そのあと会おうと良太と約束していた。
 シーズンが終了してから精神的に不安定だったのは確かだ。
 沢村は三冠王というタイトルを取ったが、チームはAクラス入りはしたものの優勝はできず、クライマックスシリーズも二位止まりだった。
「沢村が打つとチームが負ける」
 妙な噂がジンクスのように一人歩きして、マスコミやファンの間のみならず、チームメイトまでが口にしているのを聞いてしまった。
 監督も耳にしたらしく、くだらないことに気を取られるなよ、と釘を刺された。
 得点圏打率が低いわけではない。
 だがおかしなことに、沢村が三本ホームランを揃えて楽勝と思われた矢先、クローザーが打たれて逆転負けしたというようなゲームがいくつかあったのは事実だ。
「俺の采配ミスだ」
 監督は言ってくれたが、それだけではないような気がして、タイトルを取ろうが取るまいが、最終ゲームを終えたあとも、何やら後味の悪さを払拭できずにいた。
 何度もそれらのゲームを見直してみたが、データ上はむしろ沢村はよく打っている。
 さらに一年を通して四番打者としての役割はしっかり果しているのだ。
「お前さぁ、まさかあの変な噂、気にしてんじゃないだろうな? あんなの何の裏づけもない戯言だぜ?」
「良太に慰められちゃ、おしまいだよな」
 あの夜、良太は周りが遠まわしにする噂を歯に衣着せぬ直球で一蹴してくれた。
 人当たりは悪いし、マスコミだけでなく大概の人間に対して無愛想で傲慢だから、あまり人に好かれないのは自分でよくわかっている。
 嘘がないから誰にでも好かれ、自分とは対極にいるのが良太だ。
 だから子供の頃はそんな良太が羨ましかったのだろう、つい難癖をつけては喧嘩になった。
 嘘ばかりが飛び交っているような家族を嫌いながら育った沢村にとっては、良太は一点の曇りもない青空のような存在だった。
 喧嘩を吹っかけることでずっと良太の存在を確かめながら、良太とは付かず離れずの距離で関わってきた。
 大抵の人間とはあまり口も聞くことがないが、良太のように一旦自分の懐に入れた相手に対しては、とことん懐いてしまう。
 ただ、良太に対しては懐く以上の思いを抱いてしまった。
 好きな人がいるのだとあっさり振られてしまったが。

 


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