日曜はといえば、佐々木はまた母親のお供でトモのことどころではなかった。
午前中はお歳暮配りで、お隣の綾小路へ図らずも出向くことになった。
綾小路の当主夫人は茶道では母親の弟子格にあたり、昔からそれなりに行き来もあったようだ。
とっとと帰りたかった佐々木だが、小夜子もいたために、社長宅で彼女が焼いたというケーキとお茶をいただくはめになり、横浜の叔母の家に向かったのは午後になってからだった。
おっとりした性格の篤子は、幼い頃から佐々木を可愛がってくれた優しい叔母で、ここでもまたちょっと早い食事など用意され、叔母の家を出た頃はもう夕方六時を過ぎていて、うっかり首都高に入ったところで一ノ橋JCT近辺で事故があったらしく、渋滞に巻き込まれてしまった。
一般道に出るに出れず、「まだ動かないの?」という母親の文句を何度か聞かされながら、ようやく家に辿り着いたのは夜の八時過ぎのことだ。
これでやっと開放される、と思った矢先、叔母に土産にもらった菓子を食べたいと淑子が言い出し、仕方なく付き合う羽目になり、つまりは炭を熾して釜に湯を沸かし、みっちり稽古をつけられたわけである。
後片付けをしてシャワーを浴びてベッドに入った時は、既に午前零時を回っていた。
ぐったり疲れきって眠りについたものの、今度は妙な夢にうなされて明け方目が覚め、それからは眠りが浅く、最終的に目覚ましに起こされた佐々木は、一層疲れが増していた。
そんなわけで、月曜の朝は最悪な気分で佐々木は家を出た。
外に出れば出たで恐ろしく寒い。
昨夜動かない車の中で、寒波が日本中を覆うでしょうという、歓迎したくない天気予報を聞いたのを思い出す。
「うう、くっそ、寒……!」
マフラーをぐるぐる巻きにして、佐々木はとぼとぼとオフィスに向かった。
「おはようございます」
ドアを開けるといつも明るい直子の声に出迎えられ、少しばかり救われた気がして、佐々木はマフラーを取る。
「おはよう、ごめん、うだうだしててちょっと遅れてしもて」
「佐々木さん、お客様です」
自分のデスクに向かおうとした佐々木に、よそいきの言い回しで直子が告げた。
こんな年の瀬に誰だという顔で、中央のソファセットに目をやった佐々木は目を疑った。
「おはようございます」
立ち上がったのは沢村だった。
不意打ちの出現に佐々木は動揺したものの、しかしどうにか自分のデスクに辿り着く。
「何の用か聞いといてんか、直ちゃん」
佐々木は沢村にではなく直子に向って言った。
「お聞きしたんですけど、お話があるとおっしゃるだけで」
直子のよそ行きは徹底していて、実は沢村のファンだなどということはおくびにも出さない。
「今日は手ぇ離せへんから、何か用なら出直してもろて」
「手が空くまでお待ちします」
佐々木の言葉を聞きつけて、沢村が言った。
勝手にしろ! 一体何を考えてんのや、あいつは!
妙な沈黙の中、佐々木がパソコンのキーを無闇に叩くばかりで、直子もいつものおしゃべりをしかけてくることもなく、電話を取り、電話をかけ、書類を作り、プリントアウトし、黙々と自分の仕事をこなした。
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