恋ってウソだろ?!66

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 体が弱かったくせに遊び人だった父親はその時点で既に他界していたし、もし生きていたとしてもこの父親もおそらく何の役にもたたなかっただろうことは明白だった。
 横浜にいる淑子の妹で佐々木の叔母篤子が見かねて、自分の家で契約している家政婦紹介所から通いの家政婦として仲田を頼んでくれたので、佐々木は家事に関しては救われたのである。
「高島屋から行きますか?」
「悠長なことをしている時間はありませんよ。効率的に回りなさい」
「はい」
 若い頃は絶世の美女だったという容姿も、たまに風邪を引く程度で健康なところもこの気丈な母親に似た佐々木だが、自然体でがつがつしないゆるキャラっぽさはどうやら父親から受け継いだものらしい。
「綾小路さんのところはこちらでよろしいかしら」
 デパートのギフトコーナーで、贈答品を選ぶのも佐々木にとっては苦手な作業だ。
「はあ、その辺りでいいと思いますけど」
「その辺りでとは何ですの、こちらがよろしいかそちらがよろしいか、はっきり言いなさい!」
 適当なことを言おうものならビシッと指導が入る。
「えっと、こちらがいいです」
 万事がこの調子で、買い物と食事を済ませて家に戻ってくる頃には、佐々木はぐったりというのがいつものパターンだ。
 どんな仕事より疲れる母親のお供だが、おかげで余計なことは考えずに済んだ。
 ただし、この年末年始母親関連の行事がまだ何度か待ち受けている。
 翌日はスーツで畏まってのお歳暮配りだ。
 配送してもらえばいいものをと考えただけでうんざりだが、こんな調子でいっそトモの記憶もシャットアウトすればいい。
 そんなことを考えながらテーブルの上のノートパソコンを開いてメールチェックをした佐々木は、何の気なしにネットニュースに目をやった。
 時事問題のニュースが並ぶページを見渡していて、普段なら目にも留めないだろうゴシップ記事の中に沢村の文字を見つけて体が強張った。
 指は勝手にクリックし、否が応でも記事の内容を佐々木に見せつける。
 プライベートの沢村が写る画像の横には『三冠王のクリスマスデートはやっぱり女子アナ! 岡田マリオンと六本木のバーで親密なイブ!』と、見るものを煽るコピーが続く。
 思考はすさまじい勢いで昨夜のトモへと向かう。
 そうか、よかったじゃないか、ナオちゃんの話だと、スポーツ選手は女子アナとゴールインするのが流行りらしいし。
「ええ加減、あいつのことで俺の頭の中を引っ掻き回されるのはごめんやで」
 佐々木はパソコンを閉じて立ち上がると、以前春日にもらったブランデーをリビングボードから取り出して直接呷る。
「もう、金輪際、トモのことなんか……!」
 佐々木はベッドに行くと毛布の中に潜り込んだ。
 明日になったら、すっぱり忘れてやる!
 自分からトモを拒絶しておいて、未だにトモに対して未練がましい自分に、佐々木は嫌気がさしていた。
 それでもブランデーと久々な母親のお供の疲れがやがて佐々木を眠りに落とした。 

 


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