恋ってウソだろ?!69

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「自慢やないけど、小中高とストーカーには悩まされたんですよ。その都度、うまい具合に大抵何人かの親衛隊がいてくれて、被害にはあわへんかったけど。大人になればさすがにもうないと思うたのに後を絶たへんし」
 藤堂の意識を沢村から別の話題に摩り替えようと、佐々木はらしくもないハイテンションで続けた。
「ったく、俺はオッサンで、髭も生えるし胸はないっての! 中には俺が男やいうてんのに、まとわりつくやつ、モデルとかにもいてて、そういうのは一番怖い」
 佐々木はわざと自虐ネタを並べたが、それも話していて疲れてくる。
「といっても佐々木さん、髭ったって体毛も薄いし、肌も白いから、女性に間違われるのもしょうがないかもな。美貌の主には凡人には思いもよらない苦労があるんだねぇ」
 藤堂は相変わらずのほほんとした言い方で微笑んだ。
「すみません、そこで下ろしてください」
 いくら何でもこれ以上藤堂に迷惑をかけられないと、地下鉄の入り口を見つけて、佐々木は言った。
「車、駐車場に置かせてもろてもええですか? また取りに伺います」
「それは構わないが……」
 藤堂はとっくに何か気づいているだろうが、佐々木には何も話すことはできなかった。
「それから明後日のリハーサルなんですが…」
 間の悪いことに、年明けの着物ショーの衣装合わせとリハーサルをスタジオで行うことになっていた。
「ちょっと手の離せない仕事が入ってしもて、浩輔に任せたいんです」
 仕事であっても、今、沢村と顔を合わせるのは避けた方がいいと、佐々木は逃げを打つことにした。
 少なくとも三が日を過ぎる頃になれば、まだ落ち着いていられるのではないかと。
「この手のイベントには浩輔もジャスト・エージェンシー時代、クリエイターとして携わってましたし、浩輔主導でやった方がいいでしょう」
「なるほど浩輔ちゃんのためにもなると」
 藤堂が額面通りに受け取っているとは思えなかったが。
「また俺からも浩輔に連絡入れますし」
 今日のことにせよ、自分と顔を合わせたら沢村は何をやらかすか、何を言い出すかわからない。
 どう考えたって日本の野球界を代表するスラッガーの相手がこんなオッサンてのはないやろ。
 あいつ、彼女とうまくいってんのと違うのんか!
 また今度はバラの花束とか用意して、君が好きだろうと思ってとか言うたりして。
 オムライスとかハンバーグとか作ってやれば、子供見たいに喜んだりして。
 だが、あのぬくもりを別の誰かに渡してしまうのだと思うと、杭でも打ち込まれたかのように胸が痛んだ。
 
 ほんま、もう少し、もう少しだけ、トモの腕が欲しかったな……… 

 


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