パチパチという聞き慣れない音がして、佐々木は重い瞼を開いた。
一瞬、自分がどこにいるのか把握するまで、しばし時間がかかった。
はっと身体を起こすと、薄暗がりの中で炎が燃えていた。
「……エアコンだけじゃ寒いと思って火を焚いたんだ」
見るとリビングの壁にパックリ穴が開いたそこは、マントルピースになっていた。
普段は扉で隠されていたらしい。
どこにあったのか、コートを羽織った沢村は薪を持ってきて炎の中に放り込んでいる。
身体中に鈍い痛みを感じて、佐々木はまたラグに倒れこむ。
かけられていた毛布がめくれて、裸の肩が寒さに震えた。
「……あんたって、ほんと……」
唇を寄せて覆いかぶさってきた沢村が言った。
「きれいだ……」
そんな台詞に佐々木はカッと熱くなる。
「…アホか! おかしなことばっか言いな!」
「きれいだからきれいだって言ったんだ。どこもかしこも……」
佐々木は思わず拳を沢村の頭に降ろした。
「ってぇ…きれいなくせに凶暴……」
笑いながら沢村は逆にその腕を取って、そのまま唇を重ねる。
佐々木をまた手中にした充足感で、沢村はもう明日が来なくてもいいとさえ思っていた。
「言っとくけど、見た目だけなら俺、とっくに飽きてバイバイしてるさ。あんたの存在そのものが俺を絡め取って動けない。俺を最大級のストーカーにさせるんだ」
恥ずかしげもなくそんな台詞を沢村は平気で吐く。
「こんな可愛くあんたが乱れるのは俺の腕の中だけなのに、俺から離れられるわけないんだ」
「……可愛いとか言うなっ……!」
沢村に操られるようにあられもない声をあげて泣かされたのが、佐々木は悔しくて仕方がない。
結局無駄にあがいただけで、沢村のいいようにされている気がする。
窓の方へ顔を向けると、いまだ雪は止むようすもなくひたすら降りしきる。
辺りが薄暗いのは雪のせい……?
また、がばっと佐々木は身体を起こす。
「どうしたんだ? もう少しゆっくりしたら、何か食料を調達してくるから」
「……今、一体何時や?」
「え? あとちょっとで五時」
「五時って……夕方の?」
「朝の五時なら辺りは暗いぜ」
佐々木はもう少しで本気で沢村をマジにぶん殴りそうになるのをやっと抑えた。
「……携帯、貸せ……」
「え? …ああ」
沢村から携帯を受け取ったものの、連絡を入れようとして、はたとそれが沢村の携帯だということを思い出す。
「そういや、ここって、電話、ないのんか?」
「……必要ないし?」
佐々木は頭を抱えた。
一体誰にどう、説明すればいいのか。
しかも沢村の携帯から。
自分の携帯をスタジオに置いてきたことは、あそこにいた連中なら知っているかもしれない。
いやもう、とっくにスタジオなど出ているはずで。
いい加減、頭の中でぐるぐるした挙句、佐々木はやはりこいつしかないと覚えていた相手の携帯番号を押した。
「はい、西口ですが」
だが、電話をしたものの、全くどう言い訳したらいいのか思いつかない。
「あ、浩輔……俺……」
「あ、佐々木さん! 大丈夫ですか? 具合悪いんですか?」
心配したのだろう、浩輔の声がテンションが高い。
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