月で逢おうよ35

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   ACT 4
  

 寒い、と感じて勝浩は目を覚ました。
 まだ夜は明けていないようだ。
 リビングの大時計は夜中の二時過ぎを示している。
 辺りを見回すと、美利も垪和も、隣のソファで眠りこけている。
 大杉や春山たちも死屍累々といったありさまだ。
 かろうじて部屋に戻った者も、まずベッドに突っ伏しているだけだろう。
 勝浩もまた、ついやけになって飲んでしまい、ソファでしばらく眠り込んでいたようだ。
「何か、飲みすぎで頭がバカになりそう」
 勝浩は思わず呟いた。
 それでも、飲んで何も考えたくなかったのだ。
 重い足を引きずるように、階段をゆっくりあがっていく。
 と、ぼそぼそと何か人が言い争うような声が聞こえてくる。
 小首を傾げながら、勝浩はあがっていった。
「なんだよ、じゃ、何も進展してないんじゃん」
 検見崎の声だ。
 聞くつもりはなくても耳に入ってくる。
「だいたい、そうならそうと、俺に、最初から言えよな、姑息な手を使わずに。自分で勝っちゃんと部屋を一緒にしろ、とか言っといて、不満そうな顔してるから、何かクサいと思ってたんだが」
 一緒の部屋って、何? 俺のこと?
 勝浩の足が止まる。
「いや、だから心が痛くてさ、俺は。やっぱだまし討ちみたいで」
 今の、長谷川……さん?
 だまし討ちって、どういうことだ?
「何よ、まったく、幸也ってば意気地なし」
 あれはひかりの声?
「悪かったな、とにかく、今夜、いや、明日の朝までには決める」
「ほんとに決められんのかぁ?」
 幸也の声に対してからかうように検見崎が言った。
 フラリと足が浮くような気がして、勝浩は後ろに下がった。
 と、背中が手すりに当たって、どん、と二階の廊下に鈍い音が響く。
「勝浩…?!」
 その音に驚いてやってきたのは幸也だ。
「朝までに、決める……って、何?」
 勝浩は訊かずにいられなかった。
「え………いや、それは…」
「だまし討ちって?」
 手をのばそうとする幸也から、身を遠ざけようと、勝浩はまた後ろに下がる。
「勝浩、それはつまりだな」
 今度はその声の方を見て、勝浩はぎょっとする。
「何で…二人いる…?」
 同じような顔が二人並んでいる。
 俺、かなり酔ってるのか?
「……また、俺のこと、だましたんだ?」
 勝手に口から滑り出てしまう言葉。
「え? 違う…勝浩、おい、聞けって」
 慌てた幸也が勝浩の腕を掴んだ。
「い、やだ、離せよ!」
 思い切りその手を振り切ると、勝浩は階段を駆け下りる。
 リビングを通り抜け、玄関のドアを開けて外に飛び出した。
「こら、待て、勝浩!」
 幸也の声が、背後で聞こえた。

 


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