また、だましたんだ…!
優しさも嘘っぱちだったんだ!
何で……
ひどいよ!
いくら俺でも、
そんなの、耐えられないよ!
バカヤロー!
どこを走っているのかわからなかった。
ただ、走った。
哀しすぎて、涙も出てこない。
どれだけ走ったろう。
スニーカーがもつれ、前につんのめった。
倒れたときに手を擦りむいていたが、痛みすらももうどうでもよかった。
起き上がることも億劫で、勝浩はそのまま膝を抱えてうずくまった。
勝浩のあとを追って階段を駆け下りてきた幸也と検見崎は、その騒ぎにソファで目を覚ました垪和に見咎められる。
「どうかしたの?」
「あ、悪い、いや、ちょっと、勝っちゃんが酔っ払っちゃって。いいから、寝てて、垪和」
検見崎は適当な言い訳をして、玄関に常備してあるライトを掴むと、先に飛び出した幸也に続いて外に出た。
「おい、勝っちゃん、いたか?!」
サイクリングロードと林に入る細い道が交差するあたりで、検見崎は幸也に追いついた。
「見失った。俺、こっち行くから、お前、そっち頼む」
「ちょお、待て!」
検見崎は走り出そうとする幸也の腕を掴む。
「何だよ?!」
「いつだったか、お前、勝っちゃんに嫌われてるって言ってたな?」
焦りまくる幸也を制して、検見崎が問いただす。
「ああ、言ったさ、それがどうしたよ? 勝浩探すんだろ!」
「待てって。まあ深くは考えずに、お前のステーションワゴンと引き換えに、俺は勝っちゃんの情報を時々お前に流していたが。勝っちゃんにはお前の従兄弟だってことを知られるなっていうから、黙ってた。だから余計ごちゃごちゃになったんだ」
「だから、なんだって?」
イライラしながら、幸也は聞き返す。
「いや、まさかほんとに、マジだとは思わなかったが」
「だから、マジだって言ってっだろ? あいつ、さっきの聞いて、勘違いして」
幸也は声を上げた。
「お前がだましたってな。前科があるからだろ」
「……そうだよ!」
検見崎に指摘され、幸也は苦々しそうに吐き捨てる。
「高三の春、誰かターゲットを決めて落とせるか否かを賭けるって、俺と志央の暇つぶし、ほんの遊びだったんだ。そん時、志央はでっけぇ転校生、俺は勝浩って………。けど勝浩は俺があの手この手で言い寄っても取り合ってもくれなかったし、後になって賭けでそんなことしてたってバレた日には、最低だってオモクソ詰られた」
幸也の自白に検見崎は一つ溜息をついた。
「なるほど、やっぱりな。だが実はもっとやばいことをやってるんだぞ、お前は」
したり顔でそう断言する検見崎を、幸也は睨みつける。
「どういうことだ?」
「俺は勝っちゃんから、あいつが好きだった相手ってどんなやつだか、聞いたことがある」
「え?」
「高校の時の先輩で」
幸也は息を詰める。
「人のことからかってばっかで、ムカツクこともされたし、ろくでもない人、だったと言ってた」
「……………何だって?」
しばし絶句してから幸也は言葉を絞り出した。
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