晴天の元、貴船神社方面に移動した撮影隊は、再び檜山のシャープで優雅な移動の演技を含めたシーンを幾度も撮り直しながら一つ一つ丁寧に仕上げていた。
ここでは二村や牧のシーンも予定されているが、さほど撮影時間は長くないにもかかわらず、待ちの状態が続いていた。
良太は朝食の後に監督の日比野に時間を取ってもらい、二村の件を話した。
「いやあ、そんな問題があったとはね。うーん、まだひょっとしたらという段階とはいえ、もしそれが事実で明るみに出ると、由々しき事態にもなりかねないね」
腕組みをした日比野は難しい顔で唸った。
「新人のお嬢様タレントで、美聖堂社長のお墨付きということで俺もそこまで身辺調査なんかしてませんでした。すみません」
良太は頭を下げた。
「良太くんが謝ることじゃないが」
「今、ちょっと調査してもらっているので、少し時間を頂かないとなのですが、もし万が一二村を外すということになった場合、これまで二村が入っていたシーンの撮り直しということになる可能性もあるかと」
「うん、まあ、それはもう一度ミーティングで考えるとしよう」
「その場合、二村の代役を立てるかどうかということも」
「わかった。それも含めてミーティングだな」
「よろしくお願いします」
良太は、日比野と別れてから、時間を見計らって代理店プラグインの藤堂に連絡を取った。
「やあ、良太ちゃん、今ちょうどそろそろ良太ちゃんの顔を見たいかなとか思ってたところだよ」
相変わらず陽気そうな声が携帯ごしに聞こえてきた。
だが、二村の話をすると、さすがに情報通の藤堂らしく、秋山とはまた違った角度からの話が聞けた。
「その話、かなり信ぴょう性が高いらしいよ。それに実は彼女、CMで人気が出てるって評判なんだが、彼女の事務所、結構きわどいマネをしてその仕事を横取りした、って話もあるんだ」
二村の所属株式会社ドリームエージェンシーは、芸能タレント等の育成・マネジメントを業務とする中堅どころで、主役級が二人ほど、他はワキを中心にどちらかというと鳴かず飛ばずのタレントを何人も抱えているという。
アスカの情報通り、二村の父親が関西を中心に外食産業を全国展開させているフタムラホールディングスがドリームエージェンシーの大株主で、そのつてでちょっと見栄えがいい二村の娘桃子をタレントとして育てている、というわけだ。
藤堂の言うきわどいマネというのが、別の事務所の女性タレントが決まりかけていたCMの仕事を、ドリームエージェンシーの社長がその女性タレントの偽の艶聞をSNSなどで流してクライアントの心証を悪くさせて横取りし、まんまと二村がその仕事を得た、というものだ。「確かなスジからの情報だから、信用していいよ」
藤堂は断言した。
「確かなスジ、ですか」
「ああ、良太ちゃんだからぶちゃけると、俺の古巣のその仕事やった本人からの情報だからさ」
「え、英報堂さんでの仕事だったんだ。ってか、古巣って、藤堂さん、辞めても古巣と仲いいんですね」
「ま、俺はね、達也と違って今も仲いいやついて、お互い持ちつ持たれつ。特に最近タレントの身辺問題が取りざたされているから、そういう情報のやり取りは重要だよ」
藤堂ならわかる気はする。
あのニコニコ顔でやってこられると、つい余計なことまで喋ってしまう。
「ネット記事なんかガセも多いから、降ろされたタレントの子の事務所はその記事がデマだったって反論記事を載せて、ほぼそれは収まった感があるけど、ネットに乗っちゃうと半永久的に消えないからさ」
「あ、それ俺も記憶あります。去年、確か未来企画の」
良太はネットで少し騒がれていたことを思い出した。
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