「多分、アスカさんやひとみさんや、それに竹野さんみたいな人にそれこそガツンと言われたことがないんでしょう。俺、思わず竹野さんがここにいてくれたらとか思っちゃいましたもん」
良太は自嘲する。
「何、情けないこと言ってんのよ、工藤さんの舎弟のくせに」
「今度舎弟とか言ったら怒りますよ?」
その手のキーワードには即座に反応する。
「冗談を真に受けないでよ。工藤さんがヤクザを毛嫌いしてるからって良太も伝染しちゃってるし」
冗談だとわかってはいても、工藤から伝染しなくても嫌だ。
「工藤さんは子供の頃からそのことで煮え湯を飲まされてきたんだから」
「わかったわよ、もう。ほんっとにあんたって工藤さんに一途よね」
ド直球で返されて、良太はつい赤くなる。
電話なのでそれをアスカにからかわれないことは幸いだ。
「秋山さんの忠告、二村、犯罪的なことをやらかす可能性もあるから気をつけろってよ。下手をしたら水波の二の舞になるわよ」
「え?」
良太は眉を顰めた。
「前の現場でやらかしたってのが、ターゲットにしたスタッフ、ADの女の子だったんだけど、二村が空き缶蹴とばして、それに足を取られたために転んで骨折したんだって。どうも事務所側が手を回して女の子に慰謝料とか払って、二村が空き缶わざと転がすの見たスタッフらにはやっぱ金で口留めしたらしいけど、そんなのどこからか漏れるものよ」
「思った以上にタチが悪いですね。斎藤さん、それ知らなかったんだろうか」
「知らないかもね。きっと、二村の祖父だって知らないんじゃない? おじいさまの前ではいい子ぶりっこしてるのよ」
しばし良太は考え込んだ。
「それ、まずいですね。もし、映画のクランクアップ後に二村の問題行動が明るみに出たりしたら、映画にケチがつくだけじゃ済まないかも」
これは極力冷静に立ち回る必要があると良太は判断する。
「そうね、イジメとかって時点で、コンプライアンスがどうのって叩かれそう」
「調べてみます。もし、何か出てきたら、その時点で彼女のクレジットは抹消します」
「うわ、いきなり、超クール! 時々良太って、怖いくらい無情よね」
アスカは大仰に感心している。
「そうしろって言ったのはアスカさんじゃないですか」
「ハハハ、とにかく、何かあったら連絡して。秋山さん情報が役立つときもあるかもだから」
「わかりました。よろしくお願いします」
うーん、これは明日にでも日比野らともう一度相談する必要があるな。
万が一の時は斎藤に伝える必要も出てくる。
良太はまた一つ大きな厄介ごとを背負いこんで、溜息しか出てこない。
そんな中、鈴木さんから送られてきたナータンやチビの画像が和む。
ありがとうございます!、と返してベッドに入った。
「寝よっと」
いい加減ぐちゃぐちゃ考えるのをやめて、良太は毛布を被った。
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