残月42

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「そう、三木原澪って、俺、結構若手では推しだったのに、社長と浮気したとかってデマ流されて、CMにはクライアント敏感だからさ、あとで事実ではなかったってわかってもね」
「三木原澪って、朝ドラの準ヒロインとかやった人でしたね?」
「そう。力はある子だと思うし、最近英報堂でカップ麺のCMやったから、これから活躍していくだろ」
 やはり藤堂は侮れない。
 しかし、これでかなり二村が危険分子だという事実が色濃くなった。
 良太は考えた挙句、ニューヨークの工藤に電話を入れた。
「あ、お疲れ様です」
「ああ、何だ?」
「実は、二村のことで、ちょっと問題があって」
「お前が判断しろといったはずだ」
 ブチッ。
 一言くらい聞いてくれてもいいじゃんかよ!
 予測はしていたものの、良太は頭にきて携帯を放り投げたくなったが、残念ながらそれをやってしまうと自分が困るだけなので、何とか堪えた。
 二村の件でドリームエージェンシーとの間でトラブルとなる可能性が出てきたため、青山プロダクションの顧問弁護士である小田に電話を入れ、調査それに伴って起こりうる訴訟について依頼した。
「青山プロダクションにとっても、また工藤にとっても重要な意味を持つこのプロジェクトをぶち壊しかねない要素は、この際、排除しておきたいので」
 良太の言葉の強さをすぐに察知した小田は、「わかりました」と早々に調査をして連絡を入れると答えた。
 小田の連絡を待って、再度日比野に相談し、今後の方針を決めなくてはならない。
 良太は先に出発したクルーたちのロケバスの後を追って、撮影現場となっている貴船神社へと車を走らせた。
 二村を降ろした場合、代役が必要ということになれば、早急に探す必要がある。
 斎藤にもやはり話をしなくてはならないだろう。
 良太は覚悟を決めて、アクセルを踏んだ。
 ロケ現場に着くと、撮影は順調に行われているようだった。
 良太は目で二村を探した。
 すると二村はマネージャーの下山が用意した椅子とパラソルの下で、サングラスをかけ、脚を組んで携帯をいじっていた。
 時々下山に何かを言っているのが見えたが、それはほぼ命令しているかのように見受けられた。
 ベテラン女優でも今、あの扱いはないな。
 キャリアを重ねている俳優は逆に無暗に威張り散らしたりしないものだ。
 カットがかかると、良太は日比野に歩み寄って現場を離れた。
 ほかの者に聞こえない場所で、良太は要点をかいつまんで日比野に話した。
「はあ、やっぱりね。結論的に二村を降ろすことには変わりないな」
 日比野は肩を落とした。
「ええ、一件だけでなく、まあこれは事務所側がやったことだとしても問題が浮上したとなったら、まずいかと思います」
「しかし、彼女の出演シーンだけをカットすることも考えたが、どうにもつじつまが合わなくなるところが出てくるから、ここは代役を立てるしかないな」
「難しいですね。この先も二村のシーン割とありますよね」
 良太も頷いた。
「二村のせいでこのプロジェクトをぶち壊したくないので、早急にトラブルは排除したいです」
 工藤が力を入れているプロジェクトだ、邪魔するものは何であれ許せない。
 そんな思いが良太の中にはあった。
「確かに、少しでも早い方がいいかな。このあと二村のシーン、念のためにスケジュール通り進めるが」
「よろしくお願いします」
 ところがちょっとした事件が起きたのはその夜皆がホテルに引き上げてからのことだった。

 


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