すると檜山のポケットでメールの着信音が聞こえ、檜山がポケットから取り出したのはビニール袋に入った携帯だった。
「プリペイド携帯、ってとこは三文ミステリーの受け売り? 下山」
途端、下山の顔が引きつった。
「な、んで、私に……」
「だってあんた、トイレのゴミ箱にこれ捨てただろ? ほら、ちゃんと動画に映ってるけど?」
檜山は今度は下山の方に自分の携帯の画面を向けた。
動画は二村の部屋を出た下山がロビーのトイレに携帯を捨てにいくまでが映されていた。
「これ、あんたが捨てたあとすぐ、俺、拾った。俺、指紋はつけてないし」
さらに今度はその動画の前に副支配人らに見せていた動画を下山に見せた。
「そんでこれ。牧の撮影中に、下山が牧のバッグに二村の財布を入れるとこ」
それを聞くと二村が檜山から携帯を奪おうとして、ひょいと檜山に肩透かしをくらった。
「おっと」
すると良太は自分のタブレットを開いて、二村と下山に向けた。
「匠から送ってもらって確認しました」
あたりをきょろきょろしながら、下山が牧のバッグパックのポケットに財布を入れるところがきれいに映し出されている。
「その前に、二村、牧の前を通り過ぎる時わざと自分の財布落として、牧に拾わせただろ? 俺その時、何か変だと思ったんで、物陰から注意して見てた。そしたら下山が財布を入れた」
檜山は続けた。
「これは何かお前らがしでかすつもりだと思って、あらかじめ牧を園部と一緒に俺の部屋に呼んだんだ」
二村と下山はしばし二の句がつげない様子で顔をこわばらせた。
「二村さん、これで牧さんがあなたの財布を盗んだという事実はなくなりました。どういうことなのか、説明してください」
毅然として良太は二村を見た。
「あたしは知らないわよ! 良太!」
二村が喚いた。
「申し訳ないが、二村さん、あなたにそう呼ばれるいわれはない」
良太の強い言葉は痛烈に室内に響く。
「下山が勝手にやったことよ! あたしは知らない!」
二村がそう喚くと、下山もついに激高した。
「何言ってるんだ! あんたが俺にやれって言ったんだろ? 牧に拾わせて指紋がついた財布を牧のバッグに入れて来いって!」
今度は周りのみんなに向かって下山が声を上げた。
「それでプリペイド携帯で牧を呼び出して、その時間に泥棒に入ったって騒げば、牧が警察に捕まるとかって! そしたらスキャンダルで、映画も撮り直しでいい気味だって! こいつがやれって言ったんだ! 俺は社長にこいつのいうことハイハイと聞いてりゃいいって言われてただけだし!」
「でたらめ言わないでよ! 下山! あんたなんかクビよ!」
二人が低次元の争いをしているのを見て、良太は眉を顰めた。
「見苦しいのでやめてください。二村さん、下山さん、お二人は虚偽告訴、業務妨害でうちの顧問弁護士から訴訟手続きを取らせていただきます。尚、当然、二村さんには役を降りていただくことになります。明日にはホテルを引き払っていただくのでよろしくお願いします」
冷静かつ端的に良太は言った。
「そんなことできるわけないじゃない! うちの事務所の社長が黙ってないわよ! それに斎藤さんだって私を降ろしたりしたら承知しないわよ! スポンサーだって降りることになるわ!」
二村はまだ呆れるような御託を並べた。
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