「フン、バッカみてぇ」
グイッとカクテルを飲み干したロジァは、中に戻ろうとした。
すると不意にハンスがロジァの腕を引いた。
「車、好きなんだろ? レースにも来てたし。乗ってみるか?」
「え?」
ロジァは胡散臭そうにハンスを見る。
「だれにも引かないってとこが、気に入ったよ、坊や」
ハンスは素早くロジァの唇をふさごうとした。
ロジァは驚いて、咄嗟にハンスを押し戻す。
「何すんだ、てめー!」
「お近付きになりたいだけだぜ。俺と付き合わないか?」
予想もしない科白にロジァは一瞬言葉を失った。
「バッカじゃねーの? てめー」
ロジァがさらに何か言おうとした時、ドアが開いた。
立っていたのはアレクセイだった。
「ホストがいなくなっては困るだろ?」
アレクセイはハンスに言った。
みんなに囲まれてはいても、ロジァの居所は常に目で追っていた。
ロジァは何も言わずに彼の傍を通り抜けて中に入った。
「どうしたんだ?」
アレクセイは一応ハンスに問いただす。
「口説こうとしたが失敗した」
アレクセイはドキリとする。
「俺の気をもませるな。同僚ってだけじゃない、大事な上司の息子なんだ」
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