「アレクセイが嘘を言ったら?」
「明日からアレクセイ自身が困るだけですよ。ひょっとしたら、THE ENDにもなりかねないから、そんなことはしないでしょう」
ハンスはアレクセイにウインクした。
「では、メインイベントは最後のお楽しみということで、二時間後までにカードをこの中にどうぞ」
そのようすを見ながらバカバカしいと、ロジァは呟いた。
「アレクセイの本命ね? 一体誰だ?」
フランツが寄ってきて、わざとらしく言う。
「くだらねー! 俺は帰る」
「まあま、せっかく俺がピアノ披露するんだぜ」
踵を返そうとするロジァをフランツは止めた。
「それに、当てたら新車ってのは魅力だな」
「車は俺がもらうぜ。あのやろうの魂胆はわかってるんだ」
ロジァはやけっぱちでそう言った。
するとフランツは、「ハンスのことか?」とにやつきながら切り返した。
「何で知ってる?」
「昔っからの仲じゃないか」
フン、とロジァは思う。
「アレクセイ次第ってやつだな」
フランツはニヤリと笑った。
やがてフランツがピアノを披露するというのでホールは再び盛り上がり、フランツがピアノの前に座ると、静まり返った。
ベートーヴェンの『熱情』そしてショパンの『華麗なる大ポロネーズ』。
アンコールは『愛の夢』で締め括った。
さて、ハンスの用意した箱の中には、皆がカードを入れたが、ロジァは入れるつもりは毛頭なかった。
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