「宇宙局はかつて宇宙開発研究所の奥に、英才教育プロジェクトをおき、そのプロジェクトには四、五歳から十歳くらいまでの子供達が各国から参加していた。ロジァやカテリーナはそのメンバーだ」
「それは知っている」
壁に掛けられた絵は、明るい海辺の町だ。
鉄面皮のようなこの男にも癒してくれるものが何か必要なのだろうか。
「調度その頃だ。君も知ってのとおり、数億光年離れている小惑星βが実は彗星であることにR観測所の研究グループが気づき、NASAもそれを確認したが、国際天文学連合が発表する前に、NASAの宇宙開発研究所内の英才教育プロジェクトにいた少年が、その彗星が半年以内に地球に大接近し、かつ九十九パーセントの確立で衝突すると言い出した」
それはアレクセイも知らなかった。
まさか、予見したのもロジァだったとは。
「衝突する時刻や場所、速度、大気圏に入ってからの運動エネルギーの大きさなどからシュミレートされたデータを突きつけられた当時の宇宙局長官クラークは、子供の戯言とするにはあまりに精細な情報に慌てて会議を招集した」
「ガキに指摘されるまで気づかなかったってのも、オマヌケな話だよな?」
アレクセイは茶々を入れたが、ベッカーはにこりともせず続けた。
「データによると、彗星βは三十数個の破片群で、それぞれの破片がかなり巨大だった。20xx年十月の半ば約五日間に渡って地球に衝突、百万メガトン級の運動エネルギーが引き起こす現象は全地球的な破局をもたらすと推測された。急遽、パニックを避けるため国際会議が秘密裏に行われた。各国の専門の学者が集められ、即座に彗星β対策プロジェクトが結成された」
「俺もロシアから参加した一人だからな」
アレクセイは肩を竦めてみせる。
当時アレクセイは十五歳だった。
「無論承知している。君たち兄弟はエンジン設計に重要な役割を果たした。ところがその会議において、ロケットにセットするレーザーの誘導システムに、少年が造り出したプログラムが取り上げられ、何回かの打ち上げ実験の結果、そのプログラムが起用されることになった。ロケット打ち上げは成功し、彗星βの破片の大規模なものは破壊され、地球は救われた」
ベッカーはそこでしばし口を閉ざした。
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