春の夢61

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「誘導システムのプログラミングをやったのが、八才だか九才だかのガキだったってことは、あっという間に俺達の耳にも入ったよ。アメリカは慌ててそのガキを隠そうとしたみたいだけどな。まあ、そのガキの心中を思ってあまりあるよな? 下手すればよってたかって大人の、いや、愛国者を名目にした連中の餌食になって、潰されたかもしれない」
 アレクセイは苛立たしさを隠そうともせず言った。
「ああ。もし子供たちの指導をしていたDr.ラファエッロがその幼い少年をかばおうとしなければ、まさしくどうなっていたかわからない。当時の宇宙局長官ヘンリー・クラークは彗星衝突から逃れた後に、誘導システムが他国の軍事関係者に利用されたらという危惧を持った。彼は、副長官のスターリングにトップシークレットとして、その少年科学者を隔離するよう言い渡した」
 頷きながらベッカーが語る言葉を、アレクセイは腕組みをしたままじっと聞いていた。
「ところがアメリカ空軍はその存在の重大性を察知し、その少年科学者を『Dr.C』として、宇宙局に対してDr.Cのシステム及びDr.C自身を要求したのだ」
「その頃はとっくに、各国の中枢はDr.Cというそのガキの存在を知っていたよ」
 アレクセイは言った。
「まさしく後手後手だった。もちろん、核兵器を搭載した核保有国の爆撃機、核弾頭などに備え、アメリカ空軍は強力な防衛システムを日々構築し続けている。イタチごっこだ。さらに相手国のシステムに対抗するためには、それを上回る頭脳を必要とするだろう。当時空軍はそれを主張した。それに対して宇宙局側は、局自体は既に軍から独立していること、あくまでも宇宙局では平和利用のためのプロジェクトのみを追求するとして、クラーク前長官、副長官のスターリング、及び幹部の科学者たちの断固とした反対意見により、空軍の要求は退けられたし、Dr.Cに関する情報漏れは最低限にとどめられたはずだ」
 ベッカーは続けた。
「Dr.Cの存在は、宇宙局のトップ・シークレットとして局幹部の頭を悩ませることになったが、空軍側はとっくにその正体を突き止めていた。しかし、Dr.Cはアメリカ空軍だけが必要としているのではない。それは空軍のみならず嫌というほど宇宙局は思い知らされた」
「じゃあ、何で、元空軍のエッシャーやあんたがここにいるんだ?」
 アレクセイは皮肉った。

 


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