春の夢62

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「エッシャーは空軍内では、まだ年端も行かない少年を軍事活動に利用するということに反対した一人だった。宇宙局に空軍からの人材を入れるというのは、当時の大統領の意向で、エッシャーはむしろ空軍に対抗するべく自ら望んで入ってきた。当時から私は彼の部下であり、ここでもそれは変わらない。私は局長直々にロジァのガードをするよう指示されている」
 ロジァという言葉は自然とベッカーの口からこぼれた。
「へえ、それで、空軍では、ある程度ロジァが育ったというんで、拉致しようとしたって?」
 アレクセイはまた揶揄した。
「その機会を常に狙っていただけだろう」
「冗談じゃないぜ、ロジァはモノじゃない、人間なんだ」
 強い言葉でアレクセイはベッカーに食って掛かる。
「君は私の質問に答えていない。何故、知っている? ロジァが話したのか?」
 あらためてベッカーはアレクセイに問いただした。
「そんなもん、軍人がロジァといつも追っかけっこしてるんだ、町のギャング『ブラック』の連中だって、おかしいと思うさ。いくら宇宙局長の息子といってもな。俺にそう言ったのは、あの連中だ。俺は、彗星事件の時のことを思い出し、当時騒がれた天才少年の年齢とロジァが合致するんで、想像をたくましくしただけさ」
 アレクセイが軽くそう説明してやると、ベッカーは頷いた。
「なるほど…」
「それに抜かっているのはあんたの部下だ。ロジァに逃げられた時、青くなって、つい、『ロジァにもしものことがあったら、国家的損失だ』って言ってたのを『ブラック』の連中に聞かれてる」
「何だと?!」
 これはベッカーも初耳だったらしい。
 さらにベッカーの形相が強ばった。
「言っとくが、俺はロシアにロジァのことを洩らしたりはしていないぜ。ひょっとして、俺の毎日の行状はとっくに盗聴でもして、了解済かな?」
「まさか、そんなことはしない。CIAがもしやっていたとしてもな。気をつけた方がいいかも知れない」
 にこりともせずにベッカーは言った。
「そうしよう」
 そう言ってから、ややあってアレクセイは続けた。

 


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