「俺はロシアを捨てたがロシア人であることは間違いないし、ロシアという国の中の生まれた町も自然も文化も好きだ。だが、その国を動かしている、この二十一世紀においてまだ侵略のための戦争を平気でやるような連中には反吐が出る。俺もあの国にいたらそういうやつらにいいように使われるところだったろうな。そういうやつらがいる国には何の未練もないし、そいつらへの忠誠心なんか微塵もない」
相変わらず読めない表情のままのベッカーをまっすぐ見てアレクセイは「ついでに言えば軍人も嫌いだ」と付け加えたが、ベッカーはそれに対して何も反応を示さなかった。
フンと苦笑したアレクセイはしばし躊躇いがちにベッカーに訊ねた。
「しかし…あんたも…俺とロジァのことは知ってるな?」
「知ってる」
ベッカーはにこりともせずに言い切った。
「つまり……どういう…関係かも?」
「もちろん」
はっきり肯定されて、アレクセイは考えた。
「それを知っているのは…あんたと、あんたの部下と、他には?」
「私とヒューだけだ」
「それを…報告したんじゃないのか? つまり、エッシャーとか…その、局長とかに?」
さらに聞きたかったことをアレクセイは並べ立てた。
「そこまでする必要はない」
ベッカーは断言した。
「そっか……つまり、局長はやはり知らないんだな。これから…報告する気はあるか?」
「する必要はないと言ったはずだ!!」
ついにベッカーは語気を荒げた。
「ハハ……あんた、絶対いい奴だと前から思ってたぜ!! 安心しな。プライベートは俺がロジァを守ってやるから。これからもよろしくな!!」
そう言ったと思うと、いきなりアレクセイはベッカーの頬にキスした。
「な……っっっ!!」
ベッカーはアレクセイが出ていったドアを睨みつけ、火を噴きそうに真っ赤になって怒った。
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