春の夢66

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 アレクセイが車を停めたのはサウスブロンクスにある『ヘルストリート』が入っているビルの前だ。
 以前、ロジァを探してこの辺りに停めたカウンタックをブラックの連中に滅茶滅茶に壊された経験があるが、先日、仲良くロジァやヒューを助けたからもうそんなことはないだろう、なんて思ったら大間違いだ、とアレクセイもわかっている。
 だから中古のランドクルーザーをポールのつてで買った、というか買わされたのだ。
 とにかくポールに用があったアレクセイは、地下へと続く階段を足早に降りた。
 さすがに何度か顔を出しているので、アレクセイだとは覚えられているようだが、気を許すとたかられる。
「よう、どうした、今日は」
 ビールを飲みながらポールがニヤニヤと聞いてきた。
「ロジァは?」
「来てねえな」
「どこにいる?」
 するとポールは馴れ馴れしくアレクセイの肩を抱いて、「そうだな、一発やらせてくれたら教えてやってもいい」と耳元で囁くように言った。
「俺がその気になるような誘い方をしろよ。どこにいる?」
 イラつきながらもう一度訪ねると、「さあ、なんか次のブロードウェイ・ボムに出るとかってマンハッタンの方へスケボしてったぜ?」とポールはしれっと言う。
「何だって?! 冗談じゃない! F1に出るより千倍も危険極まりない!」
 ブロードウェイ・ボムはスケボーのレースだが、いきなり開催される違法のイベントだ。
 だからこそ開催されると大盛り上がりになる。
 ポールは肩を竦めて見せると、瓶に残ったビールを飲み干した。
 クソ!
 アレクセイはイラつきながらヘルストリートを出ると、大きく溜息をつく。
「仕方がない、奥の手を使うか」
 アレクセイは携帯を取り出し、GPSのアプリを立ち上げた。
 CIAかベッカーのマネのようで、本当いえばやりたくなかったのだが。
 ターゲットは確かにマンハッタン辺りを移動していた。
 アレクセイは携帯を立ち上げたまま車を走らせた。
「ここいらで待ってれば来るだろう」
 ロジァの与り知らないところでGPSの小型発信機をスニーカーに仕込んだのだ。
 もちろん、そのスニーカーを履いていなければ全く役に立たないが、今日は履いていたのを確認している。
 うまい具合に軽快にスケボーに乗ってやってきたロジァはちょうどアレクセイの車に近づいた。

 


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