中林重工本社の前で車を停めると、工藤は車を降りしな良太に言った。
「引継ぎだの、考える必要はない。いつでもお前の都合に合わせる。決まったら返事をくれ」
なんか、あっけなさ過ぎて、涙も出やしねー。
良太は工藤の背中をぼんやりと見つめながら、しばらく車の中で動くことができないでいた。
なんか、俺、発作的に死にたくなるヤツの気持ちがちょっとだけわかった気がする。
突然、目の前に深い亀裂ができてさ、そこに放り出される感じ?
その亀裂を絶望と書くのだ。
突然の解雇、リストラってやつ?
俺にもやってくるとは。
でも、それより何より、結局、こんな、簡単に放り出せる程度の存在だったんだ、俺って。
工藤にとって。
わかってたんだけどさ。
やっぱ、黒川真帆が結構気に入ったのかも。
てより、ハハ、俺なんか、初めっからスタートラインにも立ててないって。
いつでも俺ばっかだった。
都合よく沢村に押しつければ厄介者もおさらばってわけか。
ちょっとは工藤も気に入ってくれてるかも、なんてさ。
良太は笑う。
どうせ俺から始めたんだ、俺がきっぱり幕を引いてやろうじゃん。
あと腐れないようにさ。
良太は空元気で、車のエンジンをかける。
言葉ではわかっていても、半分以上まだ信じ切れないのだった。
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