小林千雪原作の老弁護士シリーズ『阿修羅なれ』が、老弁護士を端田武、相棒の若手弁護士を大澤流のW主演でMBCテレビでドラマ化されることになっていたが、その顔合わせには、工藤だけでなく良太も同席した。
小笠原の言う通りスポンサーである美聖堂広報部長とともに黒川真帆の姿があった。
しかも工藤を見た途端、真帆は馴れ馴れしく近づいてきて、例のスキーでのことから何から、一人で勝手にしゃべりまくる。
工藤は苦々しそうに知らん顔をしているが、良太はイラつきながら、これは仕事だからと、顔合わせが終わるまで自分を落ち着かせるべく密かに拳を握り締めた。
夕方、ヨーロッパの仕事から帰ってオフィスを覗いたアスカと秋山は、工藤と良太のようすがまたしてもぎくしゃくしているのに気づいて顔を見合わせた。
ちょうどそこに居合わせた小笠原にアスカが問いただすと、ドラマに黒川真帆が出ると言う話になった。
「何で真帆が出るのよ」
アスカが小笠原に突っかかる。
「真帆のやつ、今度はマジに工藤狙いみたいでさ、積極的に工藤にアプローチしてるみたいだぜ?」
アスカと秋山は小笠原の能天気な答えに思わずため息をついた。
やがてドラマの撮影に入ってみると、工藤が顔を見せれば真帆は目に見えて言い寄り、これが最近あまりさしたる話題がなかった週刊誌やテレビのワイドショーを早速騒がせることになった。
当然良太は面白くない。
しかも真帆はあっけらかんとと工藤が好きだの何だのとインタビューに答えているのだから、始末に終えない。
「言っとくが、真帆は勝手に騒いでるだけだぞ」
ある時、妙にこそっと弁明なんかする工藤を、つい良太はかえって妖しんでしまう。
わかっているのだが、納得いかない。
何でだよ………
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