追撮のために下柳、有吉、それに番組監修を依頼している東京科学大学動物行動学の内野教授にも良太がチラッと声をかけたところ、急ではあったものの今回も同行すると言ってくれた。
実際、現地では教授の動物に関する知識が大いに役立って、余計な撮影を極力減らすことができたのだが。
「必要があるかどうかわかりませんが、あの西崎さんの過去の番組から推測すると、他にも子供が親のスパルタ教育に耐えて巣立っていく、みたいなシーン好きらしいんで」
ギリになってからいちゃもんをつけたMBCの幹部西崎が制作畑にいた頃のデータを探して吟味し、良太が打ち合わせの際、内野にそんなことを伝えておいたところ、内野からいくつか提案があり、撮影に含めることとなった。
良太は良太で、水波の代役にオファーした大澤が別の番組のオファーを受けているということになったため、他の候補者二名に打診したところ、どちらも無理という返事を受けたとプロデューサーの方から連絡を受け、工藤高広の青山プロダクション所属のプロデューサーという肩書があるというだけで良太までが代役の選考会議に駆り出された。
また数名の俳優が上がったが、打診したところ代役に難色をしめしたり、水波の代役というところがネックになっていたりと、一向に決まらず、時間だけが過ぎていき、いよいよ暗礁に乗り上げそうになった時、良太はドラマ「からくれないに」の打ち上げの席に顔を出した際、大澤に「あれどうなった?」と聞かれた。
「あれって?」
「いや、だから、水波の代役だってばよ」
「ああ、あれねぇ。二転三転、オファーすると最初は機嫌よくOKかなとかって感じみたいなのが、水波の代役って言うとやっぱ無理ってなるらしくて、プロデューサーも頭抱えてるってか、何で俺まで駆り出されるのか、会議にさ」
良太はあくまでもアスカが出演している事務所として参加しただけなのだが、いつのまにか制作側に呼ばれているわけだ。
「うーん、俺としてはやってやれないことはない、とは思うんだが」
大澤はそう言って言葉を濁す。
「え、やれるんすか?」
「いや、うちの所長がさ、あの水波の代役とかって、嫌がっててさ」
「ああ、やっぱな」
良太はがっくりと項垂れる。
「良太、どう思う?」
「え、俺? に聞かれても……、大澤さんが水波色を一蹴して別物にしちゃえば、みたいな」
「それは、多分、そうなるとは思うんだが。俺、だし」
良太は思い切りハハハと笑う。
「このやろ、思い切りバカにしやがったな」
大澤は良太を軽く睨む。
「してませんて、らしいって思っただけで。まあ、相手アスカさんだし、気心しれてるし、うまくいくとは思うけど。あと、CMも連動してるからこっちもアスカさんと大澤さんってことになるし、CMのクリエイターが佐々木さんだから、それは太鼓判。何せ、あの、アディノのCMやった人だし」
「アディノの?」
大澤がくらいついたのはそこだった。
「俺、あのCM、すっげー気に入ってんだよな」
「ああ、あれは、いいっすよね」
何せ、沢村とだもんな。
「俺、やろうかな」
「ほんとですか? あ、でもあんなかっこよくいくかどうかはわかりませんよ? クライアントも違うし」
「いや、俺、やるわ。所長からそっちに連絡させる」
アスカはそのやりとりを何も言わずに見ていたが、打ち上げがお開きになって、一緒のタクシーに秋山と乗り込んだ時、「良太さあ、あんたってひとたらし」とボソリと言った。
「はあ? なんすか、それ」
助手席から良太は振り返った。
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