「大澤、コロッと良太の甘言に乗ってたじゃない」
「ちょっと甘言って、俺はただ」
「戦法は違うけど工藤さんの後継だな、りっぱに」
アスカと良太のやり取りに口を挟んだ秋山も頷いた。
「秋山さんまでやめてくださいよ」
良太は軽く抗議する。
そういう意味での工藤の後継とかは言われたくないぞ。
しかし、翌朝大澤の事務所からオファーを受けるという連絡が入り、ドラマのプロデューサーに早速伝えたところ歓喜している様子が電話越しにも伝わってきた。
日本シリーズはといえば、福岡での第一戦は沢村がホームランをはなったものの、点がなかなか取れず関西タイガースの負け、第二戦は接戦となり、沢村も適時打で八回に逆転、今度こそ行ける、と思ったのも束の間、九回裏にさよなら打を打たれて敗退、今日は移動日でタイガースのホームグラウンドへと戦いの場を移して明日が神戸での初戦となる。
沢村に、タイガースに何とか勝ってもらいたいというのは良太の本音だが、報道の一端を担うものとしては公平が原則だ。
当然それは心得ているものの、沢村が打てば、やった! と自然と拳を握るし、次のバッターでゲッツーとかになると、クソ、と思ってしまう。
ただし、そこは日本シリーズ、相手は強豪ホークスで、実力のある選手のプレーは見ていて凄いと思う。
MLBに行った日本人選手が活躍すると、もちろん同じ日本人として勝手に誇らしく思うのは仕方がないが、年俸の多さだけでなくMLBに行った選手の方が日本のプロ野球選手よりも格上的に見られがちだ。
けれどプロ野球の黎明期ならいざ知らず、MLBに行かなくても今の日本球界にどれほどすごい選手がいるかは、長年野球をやってきたからこそわかるとそれだけは良太も自負している。
いずれにせよ、様々なスポーツが台頭している昨今だが、万年野球小僧としては、野球の面白さを少しでも伝えていきたいという信念はかわらない。
タイガースのホームで行われた日本シリーズの第三戦は辛くもタイガースが逃げ勝ち、第四戦九回の沢村の逆転サヨナラで第五戦につなげた。
劇的な勝利にタイガースファンはもう優勝したかのような大騒ぎで迎えた第五戦。
タイガースが有利な展開で進め、無失点で抑えてきた先発の原田が六回にアウト一つ取ったところで打たれ、一、二塁となったところで中継ぎの細川がツーアウトとしたが、ホークスの主砲を迎え、すっぽ抜けたフォークをバックスクリーンまで持っていかれ、逆転を許し、以降両チームとも点が入らず、ホークスの三勝二敗で決着は福岡へと持ち越された。
この日本シリーズはなかなかいいゲームが続いてマスコミもわりと盛り上がり、パワスポも手に汗握りつつ活躍した選手たちをきっちりカメラに収めた。
そして最終戦、この日も拮抗した試合内容で、何より攻守にわたり選手のいいプレーが随所にみられた。
結果は一点差でホークスが逃げ切り、今年の日本シリーズは終わりをつげた。
今年こそタイガース日本一を心の中で祈っていた良太も残念極まりなかったものの、ゲーム内容が充実した日本シリーズで、パワスポは番組としても両チームの頑張りをしっかりと視聴者に届けられた。
日本シリーズが終わった翌日には、余韻に浸る間もなく良太は今度は北海道、小樽へと向かった。
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