ペルセウスへ11

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 やっぱり、どうしても、そんな思いが、佑人の頭の中を時々支配する。
 力のことを信じ切れないというより、多分力はそういうやつなのだ、と佑人の中ではそんな風に納得してしまっている。
 もし、他の誰かに力の心が移ってしまったら、もう仕方がないのだと。
 家族に話そうかどうしようかと、何度も迷い、その度毎に力のことをそう思い直すから、やはり言えないのだ。
 自分だけなら、もし力が離れていったとしても家族が佑人のことを心配するようなことはないから。
 昨日と同じようにきっと笑っているだろう。
 もし話したあとで、力と別れたら、またみんなして佑人のことを可哀そう、という目で見るに違いない。
 また昔のような思いをするのはゴメンだ。
 でも結局、フェアじゃない、そんな自分がずるいと思う。
 目下のところ、そのジレンマが、佑人の心の奥に燻っている難題だった。
 新宿の大型書店に向って走っていたが、近づくと、「あそこの駐車場、店と提携してっから、駐車料ちっと安くなる」と力が言う。
「そうなんだ」
 車で移動すると、まず駐車場のことを考えなくてはならない。
 自分で運転するようになってから、知らされることが結構多い。
 一方通行が多かったり、通りは大きいのに右折信号がないと道路の真ん中でなかなか動けなかったりする。
「まあ、慣れだな、慣れ」
 腕組みをして力は言うのだが。
「ってか、慣れって、免許取ったのって同じ時だろ?」
 つい佑人はそんなことを口にしてみるのだが。
「バイクに乗ってたしな」
 と、力はニヤニヤ笑う。
 いくらバイクに乗っていたとしても、力の車は結構大きいが、それを軽く縦列駐車してみせるし、ハンドルさばきが佑人は何度も思うがベテランのそれだ。
 そんなことを今さら追及してみたって始まらない。
 駐車場にバックで白線の中に入れるのも、隣の車にぶつからないように細心の注意を払って入れるのだが、やっぱり仕切り直して再度バックしてようやくエンジンを切る。
 隣で力がフッと笑うので、「何がおかしいんだよ」と佑人はちょっと突っかかる。
 するとシートベルトを外した力は、唐突に佑人に覆いかぶさってキスする。
 しばしフリーズしていた佑人は、力が離れると、「急に何だよ……」と呟いて俄かに頬が熱くなる。
「一生懸命やってる佑くん、可愛かったから」
「何だよ、それ! バカにしてるし」
「してねえよ」
 ドアを開けて降りる力はまだ顔がにやけている。

 


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