ペルセウスへ12

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 佑人は車の中とはいえ、外でキスするとか、そんな状況にはまだ順応できていない。
 英語はネイティブでも、兄の郁磨のように自然体でキスやハグのように触れ合うことが苦手だった。
 しかも当たり前のように恋人のキスをするなんて、どうしても恥ずかしい。
 その恥ずかしさをごまかすために力に文句を言ったりするのだが、時間が経つにつれて心臓がドギマギしてきたりする。
 こんな時、力が今まで付き合ってきた彼女たちなら、恥じらいも可愛げがあるだろうに、ヤローでは可愛げもクソもないな。
 佑人は心の中でブツブツと呟く。
 ただ、こうして力の傍にいられることが、時々、すごく大切な時間なのだと再認識する。
 いつか、一人になったとしても、こんな幸せな時を過ごしたことを思い起こしたりするんだろう。
 星々たちが過ごす悠久の時を思えば、人間の一生なんてあっという間だ。
 そのあっという間の中の一瞬がかけがえのないものなのだ。
 天文関係の原書を数冊を買うと、力と一緒に動物の図鑑が並ぶ棚へと移動する。
 子供向けの動物図鑑を二人で見て、佑人が可愛いを連発し、力がゴリラの種類のページで、ふざけてゴリラの顔をマネして見せたりするので、思わず声を上げて笑いそうになる。
 それから歩いて近くのデパートに行き、ペットベッドを探した。
「何か、思ったより小さい気がする」
 ラッキーがゆったり出来るようなものが欲しかったのだが、思いのほか低いし大きさがない。
「これでこの値段だったら、普通にソファ買って、カバーやクッションを換えて使った方がよくね?」
 力が言うように、佑人もそんな気がしてきた。
「一緒に座ったりもできるしね」
 ということで急遽北欧家具専門店へと向かう。
 大きさはこれがいい、値段的にはあれがいいと、二人で言い合いをしていると、売り場の若い女性スタッフが、「お二人でお使いになるんですか?」などと声を掛けてきた。
 深い意味はないとは思うが、佑人はそこのところ敏感になってしまう。
「えと、大型犬もゆったりできるようなのを探していて」
「大型犬、ですか?」
 スタッフは目を丸くする。
「おい、これ、よくね?」
 力が見つけたのはカウチソファで、オットマンまでついていて手頃な値段だ。
 佑人もそれが気に入ってカバーなどと一緒に買ったのだが、俺も欲しいと力が言い出して、結局二人ともそれぞれの家に配送の手配をした。
「やっぱ、ラッキーがあれを使うんなら、タローにも使わせてやらねぇとな」
 手頃とはいえ、学生の身分の二人にとっては結構な出費だったが、それから空腹を思い出したように二人でマックに入ったのだが、力は相変わらずの大きなマックサンドをガツガツと平らげた。
 佑人はふと、高校時代みんなでマックに入った時、そうやって力が大きな手で食べていくのを何となく見つめていたことを思い出した。
 まだ力はきっと自分を嫌っていると思っていた頃のことだ。
 それがこうして二人で一緒にバーガーを食べているという状況が不思議ですらある。

 


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