二人はそのまま力のマンションに向った。
個数は少ないが、エントランスの横に二台ほどは停めるスペースがある。
車を降りるとたちまち暑い空気が取り囲む。
ドアを開けた途端、タローが駆け出して来てお出迎えだ。
ラッキーでもそうだが、歓迎してくれるのは嬉しいが、タローのようにぴょんと飛びついてくれると、力くらいガタイが大きくなければ受け止められない。
部屋はタローのためにエアコンで二十五度から二十六度に設定してあるから、外から入るとひんやりと涼しい。
「お前、運転してる時、緊張しまくってたから疲れただろ。タローの散歩行ってくるから休んでろよ」
力はそう言いおいて、先日佑人と一緒に買った犬用の靴をタローに履かせると、外に飛び出して行った。
この時間だとまだ焼けたアスファルトで肉球を痛めるのを防いでくれる。
二人を見送って佑人は言われなくてもソファにへたり込んだ。
「そんなこと言ったって、初心者だぞ、まだ。緊張するだろ」
力の運転なら緊張なんてものとは全く無縁だ。
ハンドル捌きは軽く、車線変更もスムースだ。
車線変更なんて佑人にしてみれば自然とハンドルを握る手に力が入る。
四時半か。
佑人は何気なく携帯を見てから、Tシャツが汗でべたついているのが嫌だな、などと思いながらもいつの間にかうつらうつらしていた。
ガチャンというドアの開く音で佑人は目を覚ました。
駆け込んできたタローに力が水をやるとハフハフ言いながらタローが水を飲んでいる。
「あっちー! 夕方っても三〇度越えだぜ」
力はそのままバスルームに飛び込んだ。
ちょっと目を閉じただけなのにと身体を起こして携帯を見ると、あと十五分でもう五時半になる。
「こんなに寝てたっけ」
佑人は思わず口にした。
「シャワー使えよ。Tシャツ出しとくから」
五分も経ったか経たないかで力はバスタオルを腰に巻いて、頭をタオルでこすりながら出てきた。
「メシ、食ってくだろ?」
「うん」
さっき美月にも言ったが、郁磨が今日は家にいるというので、力と食事をしてから帰るとは言ってある。
この時期犬の散歩は早朝と夜だ。
時間によっては佑人が散歩に連れて行けるかもしれない。
ざっとシャワーを浴びてタオルで身体を拭いた佑人は、力が出しておくと言っていたTシャツがないので、仕方なく腰にタオルを巻きつけてバスルームを出た。
「力、Tシャツ………」
貸してと言おうとした佑人は唇をいきなり塞がれた。
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