ペルセウスへ18

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 だが一馬にそんな話を聞いたことで、当時の佑人のことを力は思い出した。
 めちゃくちゃ可愛かったのだ。
 転校してきたばかりで、先生に教壇の上から紹介してもらった時、真っ先に目に飛び込んできたのが佑人だった。
 力が転校するよりも前にアメリカから転校してきた子で、英語をしゃべるのだという噂だった。
 口数が少なく、あまりみんなに打ち解けていないようだったが、気になって仕方なかった。
 夏に公園で仔犬を見つけて面倒を見ようとしていた時、佑人と出くわした。
 珍しく佑人が声をかけてきたので、さっきの一馬の話のような展開になった。
 力の言うことに大きく頷いて、「絶対、責任もって飼うよ」と佑人と交わした約束が、力にとってもひどく重大な出来事だったのだ。
 佑人にとってもそうだったんだと、今になって思い返す。
 当時のことを佑人と話したことはないが、夏休み明けに、みんなで遊びに行く算段をしていた時に、力に声を掛けようとした佑人を、つい邪険にしてしまったのは、もう、ガキの心理でしかない。
 お嬢ちゃんみたいなやつ、なんてどうして言ってしまったのかと、ずっと後悔していたが、佑人とは結局仲直りも出来ずあまり話すこともできないまま、中学進学の時に学校が別れてそれきりになった。
 だが家は歩いていけるくらいのところにあったし、時々、力はこっそり佑人のようすを見に行ったりした。
 ストーカーじゃねえか。
 力は自分で笑う。
 これも佑人に伝えたことはないが、きっと力にとって佑人が初恋だったのだ。
 坂本や甲本が聞いたら、腹を抱えて笑われそうだから、彼らには口が裂けても言わないが、いつか佑人には告っておきたい。
「猫、どうしてる?」
 また皿を持ってやってきた佑人に、力は聞いた。
「うん、元気には元気だよ。よく食べるし、クスリもチュールとかに混ぜればペロって食べてくれるから楽だし。でも、風邪のせいで一人で隔離されてるから可哀そうでさ」
「そうか。慢性化してたりすると治りが遅いみたいだからな。どうする? 飼うのか?」
 力はトングを動かして皿に焼けた肉を並べながら聞いた。
「うーん、他の子に移ると問題だし、難しいとこだよね。でもずっと一人でいるってのも可哀そうだし」
「だな。誰かそいつだけを可愛がってくれる里親が必要だよな」
「そう、かな」
「チラシ、作れよ。病院にも大学にも張っとくから」
「わかった」
「練に言って、店にも張っておく」
「よろしく」
 二人のやり取りを聞いていた一馬は、「うちの研究室でも聞いてみるよ。チラシ作ったら大学の掲示板にも張っておこう」と口を挟んだ。
「うん、お願い」
 佑人は一馬にも頷くと、皿を持って配りに行った。

 


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