三つ皿を持って最後に坂本に手渡した佑人は、一馬と並んで熱さと格闘している力をチラと見やった。
佑人の家族以外は、もうとっくに力が隠そうともせずにむしろ宣言したので、力と佑人が付き合っていることは知っている。
だが、佑人はまだ家族にそのことを伝えることができないでいることが、あらためて力に対して申し訳なく思う。
力が佑人の家に来た時ぎこちないのは、佑人がはっきり言っていないせいなのかもしれないと考え始めると、頭の中がぐるぐるしてしまう。
「そろそろ、ゴミ集めてくるわ」
力がゴミ袋を持って、みんなのところを回ってゴミを集め始めた。
「SNSとかでも里親募集、すればいいじゃん」
いつの間にか佑人の傍に来ていた坂本が提案した。
「うん、そうだね」
「佑人、顔が暗いな。何かあった?」
坂本がさりげなく聞いた。
「話さないとよけい鬱々としちゃうぞ?」
茶化す坂本の口調に、佑人は笑みを浮かべる。
「うーん、また、そのうちに」
「じゃ、明日、図書館一緒に行こうぜ。一人で行ってもつまんないし」
「え…」
「図書館の前に十一時な」
坂本は勝手に約束を取り付けてすたすたと東山らの方に歩いていった。
九時を過ぎたところで、みんなで片付けを済ませると、それぞれが成瀬家を出て家路についた。
翌日、大学の図書館で待ち合わせた坂本と佑人は、それぞれ何冊かの本を借りるとバッグに入れた。
「渋谷にさ、うまいイタ飯屋見つけたから行こうぜ」
図書館を出ると、ほぼ体温に近いくらいの熱波が二人を包み込んだ。
「あっちいなんてもんじゃないな」
「渋谷?」
キャンパスを出たところにあるカフェにでも行くのだと思っていた佑人は聞き返した。
「え、力、今日バイトっつってたよな?」
「ああ、うん。ただちょっとお腹空いたかなと思って」
「ちょっと我慢しろよ」
二人は渋谷方面の井の頭線に乗り込み、坂本の要望でまた小声だが英語だけで話を始めた。
東や啓太もバイトに精を出しているらしいといった話をしていたのだが、そのうち佑人はちらちらと周囲の女子たちの視線が坂本に向けられているのに気付いた。
「ああ、それ、ちょっちウンザリなんだよな。多分、ドラマとかで見かけたってやつだろ? でもほんの一瞬だぜ? 映ったの」
英語なので坂本も言いたいことを言う。
「いや、結構映ってたよ」
「え? 佑人も見たのか?」
「そりゃ、友達がドラマに出てるとか、見ないわけにいかないだろ」
佑人は笑う。
「今度は結構ちゃんと出てるんだって? みっちゃんがなかなか堂に入ってるって言ってたよ」
「ただの小遣い稼ぎなんだぜ? それが監督にやたら頭下げられてさ。ま、これっきり? 俺には向かないのはわかってるし」
坂本は面白くなさげに言いきった。
「え、そう?」
佑人は坂本を見上げた。
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