ペルセウスへ9

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 何だか力は、前よりずっと精悍で頼もしくなった気がする。
 佑人は思った。
 あばたもエクボ、とか言われそうだが、高校時代はちょっと肩で風を切っていたようなところがあったが、今はより自然体になった。
 まあ、佑人自身も坂本なんかに言わせると、ちょっとつつくと針のバリヤーで威嚇するヤマアラシが殻に閉じこもっているみたいだったのが、最近、前を向いて歩いてるじゃん、ということらしい。
 一応、ポジティブに行こう、が今のところ佑人の目標でもある。
 力と二人でプラネタリウムなんて、まるでカップルのデートみたいだが、実際、周りはカップルが多いし、だが、決してロマンチックを求めてやってきたわけではない。
 佑人は父親が天文学者だということもあって、小さい頃からいろいろ話を聞いていたせいで宇宙や星などが好きで、本などもたくさん持っているし、ボストン時代に読んだものや学術的な原書も多い。
 力とはラッキーを通して知り合ったようなものだから、まさか力も宇宙が好きで映画やドキュメンタリーなどもよく見ていて知識が豊富で、一緒にプラネタリウムに星を観に行きたい同士だなどとは思いもよらなかった。
 佑人にとっては嬉しい誤算だ。
 プラネタリウムから出てくると大抵、周りのカップルはその余韻に浸って寄り添っていたりするが、デネブは何光年で、ペルセウスは何光年で、今見えているあの星は実はもう消滅してしまっているかも知れなくて、などと話しながら一応行ってみようという予定の展望回廊へと二人は向かう。
 三六〇度東京が見渡せる回廊に出ると、夏休みということもあって団体客、カップル、学生、家族、とまあ人が多いこと。
「富士山が見えるよ」
 二人はぐるりと一周し、佑人は携帯で写真を撮ったりしたが、力はさほど興味もなさそうに、「おのぼりさんだな」などと口にする。
「だって俺、初めて来たよ」
「え、そうなのか?」
 力は不思議そうに聞いた。
「力は何度も来てるのか?」
「まあ、ガキの頃からつるんでたやつらと来たりしたからな」
 佑人は来てみたいと思ったことはあったが、家族はみんな忙しくて、一人でわざわざ来る程でもなかった。
 ああ、それにここはカップルなら夜景だよな。
 力はきっと彼女とも来たんだろう。
 聞かずとも、彼女にねだられたんだろう力のことが想像できる。
「まさか、ディズニーランドとかも行ったことないとか?」
 力が言った。
「うん、うちの家族忙しかったから、日本では行ったことがないけど、カリフォルニアのディズニーリゾートは家族で二回くらい行ったよ」
「あそ」
 ディズニーランドもカップルが行く定番だろう。
 ついそんな風に、佑人の意識は力が付き合っていた女の子たちとのことにいってしまいそうになる。
 過去のことだと断定もできないことはよくわかっている。
 何せ、高校時代、付き合っていた子たちとは長くて三カ月だったからだ。

 


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