ACT 3
ピーーーーッ!
大きなどよめき。
力のミドルシュートがゴールキーパーの伸ばした指先を掠めてきれいに決まった瞬間だ。
グラウンドの片隅に座って見ていたクラスメイトだけではない、二階も三階も教室の窓から覗く顔。
すっかり夏色をした空の下、笛の音が響き渡る。
じとじとと毎日のように雨が続いた梅雨もようやく明けたらしい。
「うおーっ!」
「やったぁっ!」
佑人の周りでも数人が立ち上がって雄たけびをあげる。
「こらっ! 席に着け、席に!」
どこかの教室から教師が窓に張りついた生徒を怒鳴りつける声が聞こえる。
授業中なのだ。なのに、思わず窓から身を乗り出したくなるほど、白熱したゲームだった。
「力だからなぁ」
背後からそんな声が聞こえた。
佑人も心の中でその声にうなずく。
目頭が熱くなるほど興奮し、知らずきつく握り締めていた手のひらが痛い。
ゲームが終わり、力のチームが今日の勝者となった。
佑人は数人の生徒に取り巻かれながら歩いてくる、ひと際背の高い力の姿に目をやった。頑健な腕が額に流れ落ちる汗をぬぐう。
やっぱり、力は文句なくカッコいい。
高揚した思いでみつめた先で、力がこちらに目を向けたような気がして、佑人はさり気なく視線を外す。
体育は二つのクラス合同で、男女に分かれて行うことになっている。この日の男子はクラス別にそれぞれ十二人ずつ二チームで二クラス合わせて四チームに分かれてサッカーのゲームを行った。
二チームずつ対戦して勝ったチームが、もう一方の勝利チームと対戦したのだが、力が中心となったAクラスの第一チームと、Bクラスの元サッカー部員のいる第二チームが好ゲームを展開した。
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