空は遠く123

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 男が首の辺りを押さえて呻くと同時に、割れたブロックの塊が男の傍らに転がった。さらに今度は腕を目掛けて小さめのブロックが矢継ぎ早に飛んでくる。
 そのひとつのかけらが頭にあたったのだろう、男がよろけて倒れこんだ。
「力! 早く、成瀬!」
 力は聞きなれた声に、梶田を思い切り突き飛ばすと、運転席に駆け寄り、ステアリング周りでボタンを探してトランクを開けた。
 少し前に辿り着き、敷地内に忍び込んでやり取りを見ていた坂本は、車に成瀬がいるに違いない思い、どう動こうか考えていたが、男が銃を撃ったところで、ブロックを砕いて投げつけたのだ。
「成瀬っ!!」
 力が佑人をトランクから引っ張り出そうとしたところで、さっき力が殴り倒した男が起き上がってトランクへ歩き出そうとするのが見えた。
 坂本は手にあった最後のブロックの塊を、その男の背中に向けて投げつけた。
 ぐあっと呻くと、男はつんのめって前へ倒れこんだ。
 静かなエンジン音で近づいてきた車のヘッドライトが、辺りを照らし出した。
 停まった車の中から降り立った男は、佑人を抱き上げた力の方へ歩み寄る。
 振り返った坂本は、佑人の兄郁磨だと気づいた。
「厄介をかけてすまなかった。佑人を引き取るよ」
 力は郁磨に気づき、大きく息をついた。
「あっ、危ない、後ろ」
 坂本は銃を持ったインテリヤクザが立ち上がろうとするのに気づいて叫んだ。
 だが、郁磨が振り向くのと男がその拳をまともに受けて再びその場に崩れ、今度は本当に気を失うのとはほとんど一瞬の出来事だった。

 


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