「いつもほら、山本とかと一緒にいるだろ? どういう友達なのかなとか思ってて」
「いや、別にただのクラスメイトだけど」
力の名前を出されて、ついつい過剰に反応してしまう。
「そう? ほら、東山とか高田とかも、あまり評判がよくないやつらだからさ、ひょっとして意にそぐわない付き合いをさせられてたりとか」
心の内でそんなことを思っていたとしても、こんな風にずけずけ口にされたことは初めてだった。
「いや、別にそんなことはないよ。机がたまたま近いし、ってくらいで」
しかも東山や啓太とちゃんと向き合った今では、彼らのことを悪し様に言われるのは嫌だった。
「それに、ちゃんと付き合ったこともないのに、評判がよくないとか口にするのは失礼だと思うけど」
まっすぐきつい眼差しを向けられた上谷は、ちょっと目を瞬いた。
「あ、そう、そうだね、確かに。失言でした。いや、とにかくちょっと君と話してみたかったんだ、同じ帰国子女みたいだし」
好意的に聞こえたとしても言葉をそのまま信用することはできない。何より、誰かとオトモダチになるつもりはない佑人は、さっさとこの場を去りたかった。
「家庭教師が待っているから帰らなけりゃ。悪いけど」
どちらかというとまだ坂本なんかの方がわかりやすくていい。
「成瀬のお母さんって、女優の渡辺美月だよね?」
上谷の前をすり抜けて書庫を出ようとした佑人は、冷や水をかけられたようにその言葉に立ち止まる。この学校でその事実を知っている者がいるとは思わなかった。
「中学の時の事件なんて、もうとっくの昔の話だし、そんなに自分を抑えなくてもいいのに」
さらに何年ぶりかであの時の記憶を目の前に晒され、佑人は一瞬蒼白になった。
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