「あ、ちょ、待てって、成瀬」
上谷が佑人に追いすがり、腕を取る。
「だから、君と話したかったんだって。君も自分だけで抱え込むより、悩み事とか知ってる人間と分かち合う方が、気が楽になると思わないか?」
分かち合うって何を? 気が楽になる? 俺の何がわかるって?
「俺なんかと話して何が面白いわけ?」
シニカルな笑みを浮かべて佑人は上谷を見た。
「それはほら、興味のあるものが似てるし、それに俺も帰国子女ってヤツでさ、そういう悩みとか分かってくれるのって、同じ境遇の君くらいしか周りいないし」
「悩みなんかありそうにないけど?」
「そう見せてるだけさ。それっきゃないだろ?」
上谷は爽やかな笑顔を向け、馴れ馴れしく佑人の肩に腕をまわした。
上谷の話に同情したわけでも、悩みを分かち合おうなんて思ったわけでもない。何だかもうどうでもいいという気分だった。
これから三月まで、自分を嫌っている力の背中を、それでも見つめるだろう苦しさから逃げ出したかった。
そっか。
もうとっくに、嫌われてたっけ、小学校の時から。
こういうウジウジしたやつ、きっと一番目障りなんだろ。
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