空は遠く14

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「力も行くだろ? カラオケ」
 啓太は今度は隣の席の力を振り返る。
「うぜぇな」
「なこといわずに、いいじゃんかよ、明日は土曜日じゃん」
「いいのかよ、てめぇ、補講と追試が待ってんじゃねーのか?」
 力がからかう。
「ちぇ、今更シオにキズぬらなくっていいだろー」
「ばーか、逆だ。てめぇは頭に塩でも塗っとけ」
 力と啓太のやり取りに、この一角を遠まわしに見ながら席を立つクラスメイトの中からもクスクス笑いが漏れる。
 力と同じクラスになってから、佑人に最初に声をかけたのは前の席の啓太だった。
 力と親しく、おしゃべりでバカっぽい単純なヤツ。
 二年生になった初日に、英語の教科書を忘れてきたと騒いでいた啓太に、佑人は予習しているから貸すよ、と声をかけたら異様に喜んで、その日の放課後には力や東山と一緒にマックに寄ることになっていた。
 なんとも佑人にとってあまりに都合のいい成り行きである。
 クラス委員が決まり、くじを引いた番号順に席替えをしたのだが、やっぱりこれじゃまずいと言い出したのは力だ。
「でかい俺がいっちゃん前じゃ、後ろが困るだろ」
 ちょうど順番から最前列に座っていた力の意見に反対するものはなく、すぐにクラス委員は意見を募った。
 もう一度やり直しとか、背の低い順とか、好きなもの同士とか適当な意見がでるばかりで、まとまらずにいたところ、いきなり委員が佑人に意見を求めた。
「成瀬くん、何か意見ありますか?」
 最高点で入学し、常にトップを維持し続けている秀才、というくらいは知られていたためにクラス委員候補に選出された佑人だが、「僕は人前に出るのは苦手なので……」と俯き加減に言う佑人より、てきぱき弁舌も滑らかな西岡に票が集まり、佑人はほっとしていた。
 面倒な委員なんかごめんだった。極力目立ちたくはない。
 西岡にしてみれば、そろそろ受験に力を入れたい時期にやりたくないという顔をしていたから、佑人に対してちょっとした嫌がらせもあったのかもしれない。
「基本的にこのままで、不都合のある人だけ、交渉すればいいんじゃないですか」
 せっかく窓際に近い一番後ろなのだから、できるなら替わりたくはない。しかも窓側の隣は斜め前で終わっているから、佑人にとってこれ以上の席はない。

 


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